過疎化や自家用車の普及によって、地方のローカル線はどこも危機的な状況に立たされている。そこをコロナ禍が襲い、存続が危うくなっている路線は少なくない。中でも廃線が目前に迫っているのが、青森県弘前市の弘南鉄道だ。
弘南鉄道は中央弘前駅と大鰐駅を結ぶ「大鰐線」と、弘前駅と黒石駅間を走る「弘南線」を運営している。問題は大鰐線で、その状況を鉄道ライターがこう説明する。
「大鰐線の利用者数は1974年からずっと右肩下がり。2013年には一度、17年3月で廃止する方針が示されています。その後、廃止は撤回されましたものの状況が改善することはなく、同線に補助金を出している弘前市をはじめ沿線の5市町村は、23年度の収益が改善されなかった場合、25年度末で廃止すべきであるとしています」
今年度の収益がどうなるのかは春を待たなければならないが、その前に最大の危機が弘南鉄道を襲った。9月25日、レールに不具合が発見され、以後、大鰐線全線が運転を見合わせている。再開のメドは立っておらず、このような状況下で今年度の収益を改善するのは難しく、廃線が現実となりかけているのだ。
さらにレールの不具合は弘南線でも発見され、9月25日から全線で運転を見合わせた。
「弘南線は81年度には約6億円の総売上があり黒字で、大鰐線の赤字を補填してきました。ところが近年は赤字でそれもできなくなっている。そんな中での運転見合わせは大打撃です。10月26日から弘前駅と田んぼアート駅の間は運転を再開しましたが、田んぼアート駅から黒石駅まではバス代行が続いている。23年度の収支がどうなるのか、いずれにせよ楽観視できません」(前出・鉄道ライター)
弘南鉄道が廃止されれば、地域に大きなダメージを与える。なんとか存続してほしいものだ。
(海野久泰)