◆今週のキーマン:小沢一郎〈おざわ・いちろう〉(生活の党代表)●42年生まれ。47歳で史上最年少の自民党幹事長に。93年に離党後は新生党、新進党、自由党、民主党と結党と解党を繰り返す「政界の壊し屋」として君臨。
「最後の大一番」に血が騒ぐ「剛腕」の秘策
永田町を吹き荒れた「解散」という初冬の突風。安倍晋三総理がなぜこの期に「大義なき解散」に踏み切ったのか、今にして自民党内には不満が漂っている。
「沖縄県知事選敗北の大ダメージを引きずったうえ、政治とカネ問題を含めた『追い込まれ選挙』。安倍政権にとって、とんでもない落とし穴をはらんでいるかもしれない」(自民党幹部)
一方で、以前、当コラムで言及した「解散をやるなら年明け以降」を主張していたとされる菅義偉官房長官と安倍総理との間で、すでに微妙な距離感が生じ出しているとの見方も出ている。また、財政再建にねじり鉢巻きの財務省をあずかる麻生太郎副総理、先週のコラムでも触れた「消費税10%」の「民自公」3党合意当事者の谷垣禎一幹事長も再増税先送りでブンむくれ、政権内がにわかに揺れ始めている。
さて、この「追い込まれ選挙」。野党がどこまで安倍自民党を追い込むことができるかは、ひとえに小選挙区での野党統一の対立候補をどれだけ多く立てられるかにかかっている。現況は、民主党、維新の党、みんなの党、生活の党がすり合わせに懸命だが、党利党略が働いて、必ずしもスムーズとはいえない。
そうした中で、最終的にまとめ上げるキーマンは、「政界の嫌われ者」の一方で「政界一の選挙屋」としてホマレ高い小沢一郎・生活の党代表だとの見方が多分にある。
「どのオンナと寝たっていいじゃないか」は、小沢氏の名(迷)言のひとつだが、この手でかつて非自民8党派をまとめ上げて細川護煕連立内閣を作り、それまで長く政権を維持してきた自民党を野党に叩き落した「剛腕」ぶりは知られている。小沢氏の「出番」はあるのか。小沢氏と気脈があり、その動きをフォローしているベテラン政治部記者が、次のように言った。
「今年春頃から、他の野党議員と頻繁に懇談を続けている。特にここにきて、民主、維新、みんなら各党の幹部とも電話で連絡を取り、選挙協力のツボ、知恵を教えているようだ。『統一候補も当然だが、できれば新党で戦えばなお有利だ。決断せよ』などと。小沢氏自身はもう表舞台に立つつもりはなく、裏方でもうひと仕事と、政権交代への夢を捨てていない」
ここにきての民主、みんな両党の合併話にはこうした背景がある。小沢氏の野党間の選挙協力、候補者調整への原則は明快だ。各党に党利党略がある以上、細部にこだわっていてはいつまでもまとまらない。要するに、「エイ、ヤッ」で決めてしまうということだ。前回の得票数、あるいは世論調査を早急に実施して、優位な候補を決定する。各党の基本政策の違いなどは、後ですり合わせればどうにでもなる。だいたい、自民党にしてからが、保守系ありリベラル派ありでうまくやっているではないか、というものだ。
野党間をまとめるにあたって一番難しいのが、水面下でまず大筋を固めるという作業である。これができなければ、こうした話はまとまらない。野党には、この腕力のある政治家は、小沢氏以外にひとりもいない。「剛腕」も今や「老兵」、「最後の大一番」に血が騒いでいる。
◆政治評論家・小林吉弥