ちょっと今回は酒についてもっと語らせてよ。私にまつわる酒の噂の間違いを訂正しておきたいしね。
よく週刊誌に「みのはブランデーグラスにクラッシュアイスをたっぷり入れて、ブランデーをなみなみと注ぎ‥‥」と書かれたけど、残念ながらブランデーではなく、ウイスキーです! クラッシュアイスで飲むのは本当。グラスに細かく砕いた氷を敷き詰め、そこにウイスキーを注ぐ。すぐ飲まずに、グラスの表面の水滴が白い霜になるまで、じっくり待って‥‥。クイッと飲む! 本当に格別だよ。
どこで、そんな飲み方を覚えたのかって?
ロンドンに「コンノート」というホテルがあってね。ヨーロッパの皇族や財界人、日本だと大使級の人物じゃないと泊まれないくらい格の高い、超一流のホテル。死んだ女房が泊まってみたいと言うんで、私も奮発するかと予約したら断られた。次の年もまた断られた。やっと、3年目で宿泊が許された。そのぐらい格式が高いホテルなんだ。
泊まったはいいけど、ロンドンには「パブ」はあるけど「バー」はあまりないんだよ。その「パブ」で出てくるのが、何ともヌルいビールでさ。周りはジイさんばっかりだし、だったらしかたないとなって、滞在中は「コンノート」のバーに通っていたんだよ。当然、そこも一流で私も緊張しているし、「オンザロック、ウィズ、ウォーター」くらいしか言えない(笑)。私も酒は強いほうだから、酒量ばかり増えちゃう。そこで、バーテンが「そんな飲み方ダメだぜ」って言われて、教えてくれたのがクラッシュアイスだった。確かに、おいしく飲めた。酒量は減らなかったけどね(笑)。
そのバーでは飲み方だけではなくて、スコッチウイスキーについても勉強させられたよ。カタコトで注文したら、バーテンがニヤッと笑って「スカッチ!」と言い直してきやがる。
そのバーテンが言うに そのバーテンが言うには、スコッチウイスキーを注文する時は「ザ・スカッチ」と頼むと、バランタインの17年が出てくる。ただ「スカッチ」と頼めば、「こっちだ」とバーテンが出してきたのがバランタインの30年だった。「ザ」をつけないのは「言うまでもなくうまい」ということ。それから日本で飲む時はバランタイン30年になっちゃった。あれぞ、まさしく「大英帝国の味」だよ。
しかし、そのコンノートも今はオーナーが変わっちゃってね。現地にあったスコッチウイスキーの小さい酒造メーカーもどんどん買い取られて、消滅していったりして‥‥。いい歴史がなかなか継がれないのは、日本もイギリスも変わらないのかもしれないね。皆、しっかり夜の街で「酒の文化」を磨いてくれよ!
◆プロフィール みのもんた 1979年に文化放送を退社後、フリーアナとなる。以後、数々の番組で司会、キャスターを務める。1週間で最も生番組に出演する司会者のギネス記録保持者でもある。