映画関係者が語る。
「共演映画『日本侠客伝 刃』(71年)がきっかけで、十朱が完全に惚れまくり、『できれば結婚したい』とまで言っていました。ところが自宅へ行っても、健さんは何ら手を出すそぶりを見せない。しびれを切らした十朱が積極的に迫ったそうですが、やはり何もしようとしなかった。それでもアプローチを続ける十朱に、健さんは『タバコを吸う女は嫌いだ』。これが最後の言葉だったと‥‥。以降、彼女はショックで1本も吸っていません。『いつか健さんと会った時、タバコを吸わない自分を見てほしい』と言っていましたが、結局はプラトニックで終わった」
倍賞千恵子との交際が取りざたされたのは、倍賞の自宅で高倉の姿を見たという目撃談があったことが理由だった。
「2人が共演した映画『駅 STATION』(81年)を撮影している時、健さんはロケに毎回、夫婦役の倍賞さんと一緒に来るとスタッフから聞かされて、倍賞さんのマンションをカメラマンと一緒に張り込みました。よそのビルから自宅をうかがうと料理を作っている倍賞さんの姿が見えて、壁に健さんがCM出演していた三菱自動車の大きなポスターが貼ってあるんです」
石川氏はそう言って、取材時のエピソードを明かすのだ。
「これは(健さんが)来るなと思っていたら、1時間もたたないうち、管理人が1階のエレベーターのボタンをずっと押して待つようになった。すると本当に三菱の車がやって来て、停車しました。これは話ができると思って、僕らは慌てて飛び出した。マンション入り口で遭遇できたのですが、健さんは車に戻って去ってしまったんです。カメラマンもビビッて撮影できず、しばらく車で追いかけましたが、逃げられてしまった。記事にはしましたが、本人からは(交際を)否定され、証拠がないということで、それっきりになってしまいましたね」
その直後、不器用すぎるモテ男は、女優・児島美ゆきと熱烈交際、半同棲にまで至っている。83年から84年にかけてのことだった。ドラマ「北の国から」(フジテレビ系)にスナックのホステス役で出演した児島を見た高倉が気に入り、ドラマ共演者を介して電話がかかってきたのだという。
交際から20年後の03年、児島はインタビューに答え、当時のことを赤裸々に明かしている。
最初の電話から数日後、意外な「電話魔」だったという高倉が、ロケ先から自宅に戻る途中でまた電話をかけてきたという。
〈彼は「会えるか? うちはどこなの?」と尋ねてきました。「○×町のこのあたり」と説明すると、「もしかして僕、マンションの前に着いたかもしれない」。ベランダから見たら、彼がいるんですよ!〉
この時ばかりは不器用ではなかったようだ。
〈外で会うことはほとんどできませんから、室内でのデートが多かったですね。部屋の中で彼が出ている映画を見たり、当時は私、料理はあまりできなかったけど作ったりして。(中略)私の前で彼は自分のことを(本名・小田剛一の)「剛ちゃん」って言ってました。2人で映画を見る時は、私がペタッて座って、彼をひざ枕する。(中略)ある日、ひざ枕をしていると「剛ちゃん、こんなに幸せでいいのかな」って言いながら、彼が泣いたんです〉
映画ライターが言う。
「高倉は児島と2人きりになると饒舌で、ペラペラしゃべっていたそうです。ある時、テレビ番組に出演した児島が高倉とのことを暴露しようとした際、共演者の小柳ルミ子が『そんなこと、こんな場所で言っちゃダメよ』と諭していました」
そんな濃密な関係も、マスコミ報道されると同時に疎遠に。その後、高倉に女性関係の噂が流れることはなかった。