「横槌に似た形態の、胴が太いヘビ」と言われるツチノコは、日本全国で目撃談が相次ぐも、いまだ生きたまま捕獲されたことがなく、伝説の未確認生物(UMA)とされている。
1959年8月、作家の山本素石が京都・鴨川の上流、雲ヶ畑の奥地で目撃。1970年代初頭には作家の田辺聖子が山本をモデルとした人物が登場する小説を新聞に連載し、NHKがドラマ化したことで、その名を全国に知らしめることになった。
実はツチノコによく似た生き物が、アルプス山脈にも生息しているという。ヨーロッパ版ツチノコたる「タッツェルブルム」だ。
ツチノコは縄文遺跡から出土した石器などに、酷似する蛇型のものが残されていたり、壺の縁にそれらしき姿が描かれていたことから、その時代にはすでに生息していたのではないかとされる。
一方のタッツェルブルムは17世紀頃から、オーストリアやスイス、ドイツなどのヨーロッパ山岳地帯各地に、その伝承が残されている。
タッツェルブルムは地域により若干、その形態に違いはあるものの、共通しているのが、太くずんぐりとした「ヘビ」や「トカゲ」のような姿で、体長はおおよそ50センチから2メートルほど。体全体は茶や濃い灰色で、2本ないし4本脚。中には猛毒を吐くものもいるという。
ツチノコの目撃情報が多い新潟県糸魚川市では10万円から100万円の懸賞金を出し、写真提供を求めているほか、生きたまま捕獲した場合は1億円の懸賞金を支払うとしている。これはタッツェルブルムをめぐっても同じで、1934年にスイスの写真家により撮影された写真が「ベルリナー・イルストリエルテ・ツァイトゥング紙」に掲載されて以降は、写真の類はいっさいなし。
国土の6割をアルプス山脈が占め、目撃談が多いスイスでは1814年、スイス・ベルン自然科学協会が報奨金を支払うと発表したものの、決定的瞬間をとらえた写真が発表された形跡はない。
そのため、タッツェルブルムの正体については「サンショウウオか、アメリカドクトカゲではないのか」といった指摘がある。とはいえ、2000メートル級の山々が連なり、はるか昔から「魔物が棲んでいた」との伝承が残るアルプス山脈だけに、いまだ人間の目に触れていない生物がいても不思議ではないはず、との意見も根強い。
日本から数千キロも離れたアルプス山脈に潜む、ヨーロッパ版ツチノコ。日本のツチノコとの関連性はわからないが、どちらが先に捕獲されるのか…UMAファンの関心が注がれている。
(ジョン・ドゥ)