「地元大阪で建築関係の方からお話を伺っていますが、特に下請けの中小企業からは『万博の仕事は受けたらアカン』という声が上がっています。いちばん大きな要因は工期の問題。パビリオンの建設が大幅に遅れている中、その後の外装、内装、電気工事となると、さらに着工がずれ込んでタイトなスケジュールを強いられる。ただでさえ建設業界は人手不足で、24年4月には時間外労働の上限規制が適用されます。新国立競技場で20代の現場監督が過労自殺し、新名神高速道路の延伸工事では橋桁が落下し、10人の死傷者を出しました。工期短縮のしわ寄せがいくのは下請けの作業員。これは命に関わる問題なのです」
こんなありさまでは、大阪万博のテーマ「いのち輝く」がブラックジョークに聞こえてくるではないか。
地下では新たな交通インフラとなる地下鉄の延伸工事が進められているが、
「地下鉄の掘削工事では、含水率49%というドロドロの堆積土砂を掘り起こしていくことで、せっかく地中に埋まっていたPCBや六価クロム、ダイオキシンといった有害物質が、粉塵となって地上に飛散することになります。現場の作業員がその粉塵を吸い込めば、甚大な健康被害をもたらしかねません」(西谷氏)
予定通り、夢洲駅が24年内に開業しても問題は山積だ。清水氏によれば、
「(地下鉄が)開通したら工具を持って地下鉄で通うように」
と言われた作業員もいるという。
「夢洲の現場では地中に埋めたパイプからメタンガスが噴出しているという話も聞きますし、労働環境は劣悪と言わざるを得ません。しかし、働く側の目線に立てば、うめきたエリアの再開発にマンションの建設ラッシュなど、働く場はいくらでもあります。わざわざ不便な夢洲に通ってまで働く理由がないのです」(清水氏)
西谷氏もこう心配する。
「24年4月以降の時間外労働の上限規制を取っ払おうとする動きも問題ですが、そもそも夢洲には、作業員が寝泊まりできる飯場がない。これから本格的な工事が始まれば、夢舞大橋も夢咲トンネルも、資材を運ぶ工事車両で連日の大渋滞ですよ。そんなところに通わなければいけない作業員が気の毒でなりません」
カネ不足に加えてヒト離れも深刻だ。