再び、夢洲で働く作業員の肉声を取り上げよう。
「現場で『間に合わない』は禁句。元請けのゼネコンが『間に合わせろ』と命令してくるけど、基礎がまったく進んでいないので『どうやって早くするんじゃ!』と罵声が飛び交うことも」(40代男性)
「出勤前から残業が決まっているため、みんなの表情は暗い。ゆくゆくは24時間3交替制になるそうだが、どこから人をかき集めてくるのやら」(50代男性)
こんな過酷な状態では、前述したように、いつ自殺や死亡事故が起きてもおかしくない。
案の定、11月10日には、大阪万博に参加予定だったメキシコが「予算確保の難航」を理由に撤退の意向を示していることが報じられた。これをきっかけに「不参加ドミノ」が起こりそうだが、たとえ会場がスカスカになっても、主催国と開催都市の負担は変わらない。
「大阪市民がどれだけの負担を強いられるか。会場建設費の2350億円から試算したところ、市民としての負担が1人あたり1万4152円。そこに府民、国民としての負担額を合わせると4人家族1世帯につき7万7000円ですよ。しかも建てたパビリオンは一部を除いて解体するというのですから、これほどの無駄遣いはありません」(清水氏)
11月5日までに共同通信社が行った世論調査では、「万博不要」の声が68.6%を占めた。もはや、工事現場の怨嗟の声を聞くにつけても、万博を強行する価値はどこにあるのか。清水氏が指摘する。
「日本共産党は8月30日に『25年大阪・関西万博の中止を求める声明』を出しました。延期や会場変更などの中途半端な見直しではなく、日本政府はキッパリとBIE(博覧会国際事務局)に中止を申し出るべき。BIE総会での決議が必要ですが、主催国が『NO』と言えば開催できません。参加国に支払う補償も、工事が進んでいない今なら300億円台で済みます。しかし、来年の4月12日を過ぎると、この補償額が倍以上に跳ね上がる。傷が浅いうちに一日も早く決断すべきです」
開幕500日前となる11月30日にはいよいよ前売りチケットが発売されるが、今こそ引き返す勇気が必要かもしれない。