冬の時期は、つらい風邪で鼻水や鼻詰まりに悩まされることも多い。高齢者の場合は「加齢性鼻炎(老人性鼻漏)」の可能性もあるので気をつけたい。
これは、60歳以上の高齢者に多く発症する病気で、風邪や花粉症と勘違いしてしまうケースもあるという。「加齢性鼻炎」の特徴的な症状としては「無色透明でサラサラとした鼻水が出る」「喉の痛みや鼻詰まり、くしゃみ、発熱など、鼻水以外の症状がない」「数回はなをかむと症状が落ち着く」「寝起き、朝方に鼻水が多く出る」が該当する。
「加齢性鼻炎」は、一般的な風邪薬や花粉症治療薬では効果が得られないことがわかっている。
風邪や花粉症による鼻水は、粘膜の中にある鼻腺から分泌される。鼻の粘膜は、加温・加湿器の役割を担っていて、呼吸の際に鼻を通過する空気の温度と湿度を適切に調整し、肺に送っている。
しかし、鼻の粘膜は、加齢に伴い薄く固くなり、60歳以上になると機能が低下してしまう。そのため、鼻から吸った空気の温度を、鼻の粘膜がうまく上げることができなくなり、鼻腔内の温度が低下。その結果として、鼻から吐く空気中の水分が鼻水となって垂れてきてしまうのだ。
対処法として「足湯に浸かる」「マスクを着ける」ことを実践するといいだろう。他にも、漢方薬の「八味地黄丸」「当帰勺薬散」「桂枝茯苓丸」を服用して体の冷えを抑えること、朝・晩に39~40℃程度に温めた生理食塩水で鼻うがいをすることなども有効とされている。
これからの季節は、気温が低下して、さらに鼻腔内の温度は下がりがちになる。鼻水が治まらない場合は、耳鼻科を受診した方がいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。