都の条例では明確な料金表示を店舗に義務づけている。これをクリアしたのが、“合法ボッタクリ”だという。上野氏が続ける。
「路上で酔客を狙って『1時間5000円です』などと声をかけてくる客引きが多いのですが、実際について行くと、昔のボッタクリ店のような怪しい雰囲気もなく、店内も普通でキャバ嬢もキレイ、そしてセット料金も本当に5000円なのです。ところが、1人の男性客に4~5人のキャバ嬢が一斉に付いて、『ドリンクいいですか?』と始まるわけです。例えば、キャバ嬢が注文するグラスワインが一口で飲み干せるような量なのに1杯5000円となっていたり、異常に高額なのです。それで、あっという間に1時間10万円なんてことになるのです」
もちろん、セット料金が書かれたメニューのページをめくれば、確かにドリンクの料金は書かれている。だが、キャバ嬢の前で、メニューをめくる客は少ない。男性心理を利用した絶妙なボッタクリと言えるだろう。
ところが、素直に支払いに応じないと、“合法”と言いながらも強引な態度を取るという。新宿区内に「うみとそら法律事務所」を構える青島克行弁護士のもとには、被害者からSOSの電話が入る。
「スマホで検索をして、事務所が歌舞伎町に近いということで電話がかかってくるのですが、週末の深夜11時~午前3時の間に集中しています。そして、そのほとんどが歌舞伎町交番の前からかかってきています。不当な料金を請求されて、払わずに何とか店外に出たが、店員に付きまとわれている。交番に助けを求めたが、警察官は民事不介入と取り合わないというのです。ひどい事例だと、前夜から翌日の午後3時まで店員が入れ代わり監視に現れて、交番の前から動けないということもありました」
この「SOS」は今年夏から始まり、9月までに10件ほどだったが、10月は約20件と急増している。
「悪質な飲食店が増えているのか、同じ飲食店の仕業なのかはわかりません。というのも、後日、相談に来る方が非常に少ないのです。その理由は、弁護士費用と被害金額を比べると店に料金を払ったほうが手っとり早く安いことや、免許証をコピーされて復讐されるのが怖いためなどです。しかし、数少ない相談に来られた方の中には、交番から店に戻ってしまい、店員に殴られケガを負ったうえに、クレジットカードで50万円を支払わせられたという事例もあります。警察が本腰を入れてくれれば、この事態は避けられた。少なくとも無事に店外に出たら、戻らないことが肝要です」(青島弁護士)