安ければ買う、高ければ買わない!不動産購入は投資と同様に判断しよう!
普通の人がどの程度経済的に豊かに暮らすことが出来るかに影響する要因として、不動産との付き合い方の巧拙は非常に大きい。
一生で一番大きな買い物は不動産だ、と言われることが多い不動産だが、そもそも不動産を買うことが適切ではない場合が多い。
昔の失敗をほじくり返されるような気分になる読者がいらっしゃるかも知れないが、目一杯の住宅ローンを使い、高過ぎる価格で買った不動産は、一生の重荷として人生を圧迫する。
親愛なるオヤジ族のために書いておくが、住宅ローンには、借り主が死亡した場合に、ローンを完済する生命保険がセットされている事が多い。つまり、夫が稼ぎ手でローンの借り主の場合、住宅ローンで持ち家を買った時点で、「後は夫が死にさえすれば」住宅は相続人である妻のものになる。新婚で妻の歓心を買いたい一心の時期の夫に、ローンを組ませて住宅を買わせることが出来るか否かは、多くの夫婦にあって、結婚生活序盤の勝負所だ。
住宅を購入するか否かを迷っている夫婦に不動産屋がささやく決め台詞は次のようなものだ。「賃貸で家賃を払っていると、いつまでたっても住宅は自分のものにはなりません。しかし、住宅を購入すると、ローンを完済した暁には、この家があなたのものになります。家が自分のものになる支払いと、自分のものにはならない支払いと、あなたなら、どちらを選びますか」。
経済計算が十分に出来ない夫婦は、当面のローンの返済額だけを考えて「何とか払うことが出来そうだから、いいか」と自分達を納得させて家を買うことが多い。不動産屋の勝ちだ。
家を買うか買わないかは、家の価格が高いか安いかのみで、投資の判断のように決断すべきだ。「安ければ買う、高ければ買わない」。基本原則はそれだけだ。
「自分が住む家は別だろう」と言う人もいるが、そうではない。自宅用不動産の購入は、「自分が店子である不動産への投資」と同じなのだ。高値買いは愚かだ。
仮に、賃貸に回すと家賃を月額25万円取ることが出来る不動産があるとしよう。年間の家賃収入は300万円だ。
この物件が6000万円なら、6000万円の投資に対して年間の利益は5%だ。不動産は相場変動があるが、分散投資が難しい。この利回りでは「高い!」と判断するのが妥当だろう。他方、この物件が3000万円で買えるならどうか。投資額に対して年率10%の利回りになる。これなら、家賃25万円なら必ず店子が入ると見込めて、他に悪い条件がなければ買っていいかも知れない。現実の「まとも」な価格は両者の間だろう。
実際の計算はもう少し緻密にやる必要があるが、計算無しに家を買うと、不動産屋のカモになりやすいことがおわかり頂けよう。
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。