自民党5派閥(安倍派、二階派、茂木派、麻生派、岸田派)をめぐる「政治資金パーティー裏金スキャンダル」が泥沼化の様相を呈してきた。
疑惑の中心たる安倍派(清和政策研究会)については、松野博一官房長官をはじめ、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長など10人以上の議員が、少なくとも昨年までの5年間で1000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載せず裏金化していた疑惑が浮上。さらに西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、安倍派の座長を務める塩谷立元文科相ら、派閥の幹部6人を含む大半の所属議員が、キックバックによる裏金化に手を染めていたことも指摘されている。
こうした状況下、自民党内からは「安倍派は崩壊寸前」「安倍派は終わった」との声も上がっているが、それにしても東京地検特捜部がこれほどまでに「安倍派壊滅」に執念を燃やすのはなぜなのか。全国紙司法担当記者が舞台裏を明かす。
「安倍晋三政権下の2020年1月31日、政府は東京高検検事長で『安倍官邸の守護神』と呼ばれた黒川弘務氏の定年を6カ月延長する、異例の閣議決定を行った。この強引な定年延長のウラには『黒川氏を次期検事総長に』との、安倍総理や安倍官邸の思惑があったと言われており、検察内部からは『官邸による露骨な人事介入』との声が上がった。その後、黒川氏は賭けマージャン問題で同年5月に検事長辞任に追い込まれるわけですが、振り返れば、これが今日の『安倍派壊滅』の引き金となっていたのです」
事実、安倍政権による強硬な人事介入に危機感を募らせていた東京地検特捜部は2021年6月、安倍総理の懐刀と言われていた河井克之元法務相を、公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕する。いわゆる「河井克之・案里事件」だ。全国紙司法担当記者が続ける。
「そして河合事件から3カ月後に、持病の再発を理由に総理を辞任した安倍氏は2022年7月8日、遊説中に狙撃されてこの世を去り、安倍派は弱体化への道を歩み始めた。そこに浮上したのが今回のパー券疑惑であり、特捜部にとっては安倍派に引導を渡す絶好の機会となったのです。ただし、特捜部が安倍派への恨みだけで動いているわけではないことも、付言しておかなければなりません。検察当局は政治介入によって捜査が妨害され、巨悪を眠らせる事態になることを、正義の番人として最も警戒していたのです」
いずれにせよ、検察にとって安倍元総理は「アイツだけは許せない」存在だったのだ。
(石森巌)