それにしても、かくも世論を逆なでする不用意な発言がなぜ次々と飛び出すのか。この点について、安倍政権に一定の距離を置く自民党のベテラン議員は、
「党内には今、安倍一強体制にあぐらをかいた『気の緩み』が蔓延している。しかも、思慮を欠いたオソマツな発言には、日頃から思っていることがつい出てしまったというよりは、日頃から言っていることがそのまま出てしまった、という側面もある。表に出ているのは氷山の一角だよ」
と断じたうえで、次のように実態を暴露するのだ。
「特に目に余るのが、安倍チルドレンを中心とする若手議員や、安倍さんに強い共感を抱く一部の中堅議員。実際、彼らが密室に3人も集まれば、国民や野党をコケにしているとしか思えない大暴言大会になる、と聞いている。今後また、こうした暴言の一端が公の場面で飛び出すのではないかと、私は心配だ‥‥」
このベテラン議員によれば、彼らが個室などを貸し切って開く夜の酒席などでは、次のような会話が展開されることも決して珍しくはないというのだ。
若手A 安保関連法案の強行採決の時もそうだったけど、何をやっても安倍さんの支持率はビクともしないねぇ。さすがだよ。
若手B 落ちっこない。安倍さんがひと言、「次の春闘でも賃上げを」とでも言えば、世論なんておもしろいようにコロッと変わる。国民なんてちょろいもんだ。
若手A ちょろい、ちょろい。国民のレベルもその程度ということだよな。
中堅C 今、安倍さんが解散を打っても、自民党は圧勝するんじゃないか。維新との合流問題で揉めている民主党はアホだし。
若手B 民主党なんて、ほっといてもなくなる。消滅は時間の問題だよ。
有名な和歌の一節ではないが、「忍ぶれど色に出でにけり」どころか、日頃の暴言三昧が必然的に舌禍事件を招いているのだ。実は先の丸川氏の反放射能派発言にも、同様の素地を指摘する声がある。
甘利氏の後任大臣に就任した石原伸晃氏(58)は環境相時代、汚染土などを処理する中間貯蔵施設の建設を巡り、「最後は金目でしょ」と発言して、福島をはじめ国民的な猛批判を浴びた。だが、米軍普天間基地の辺野古移設問題も含め、「最後は金目」とのホンネを陰で口にする議員は少なくないというのだ。安倍総理に近い中堅議員も、次のように指摘する。
「あくまでも水面下での話だが、若手のイケイケ議員の中には、『沖縄の米軍基地を含め、迷惑施設の建設については、最終的にカネの話になる。ゴネ得を許さないためにも、(地元住民に)釘を刺しておくのはいい』などのホンネを漏らす者もいる。もっと鼻っ柱の強いのになると、『福島はどうせ元には戻らない。汚染されているところに汚染土を置くのは当然』などと口走る議員も。薄氷を踏む思いで安倍政権を支えてきた一人として、こうした考え方をホンネとして抱く同志の存在は残念でならない」