だが、思い出していただきたい。自民党幹部に相談のないまま出馬した小池氏に、党は猛反発。小池氏は公認も推薦も得られず、自民党は増田氏を公認対抗馬として擁立する対決姿勢を見せたはずである。そして小池氏もまた選挙戦で自民党都連批判を繰り広げた。事情を知る自民党都連幹部が、この背景を解説する。
「小池氏は都知事選告示前に、自民党本部に谷垣禎一幹事長(71)を訪ね、進退伺を提出した。ところが、何ら返答はなく、党籍は残ったまま。都連は『本人、あるいは親族であっても、小池氏を応援したら処分する』という恫喝文書を出し、増田氏支援を強調しましたが、あの文書は都議会のドンと言われる内田茂自民党都連幹事長(77)が『どうしても出せ』と強硬に主張して配布したもの。石原伸晃都連会長(59)も知らなかったんです。当然、安倍総理も、小池氏を除名するつもりなどありません」
いや、それどころか、
「(小池氏の選挙区である)豊島区の自民党都議14人のうち5人が積極的に小池氏を応援した。さらには、自民党系団体幹部が小池氏の選対スタッフとして入るなど秘密裏にバックアップしていました」(自民党都議)
自民党本部の大物幹部もこんな証言をしてくれた。
「実は小池氏は、出馬数日前に安倍総理、谷垣幹事長、下村博文総裁特別補佐(62)ら幹部に、出馬の意思を伝えています。この時点で安倍総理は、誰を(対抗馬に)出しても勝てないのでは、と半ば諦め気味だった。桜井俊元総務事務次官(62)に直前で断られ、急きょ、擁立したのが増田氏でした」
事実、安倍総理は告示直後から複数の親しいメディア関係者に対し、
「(当選するのは)小池だよ、小池!」
と漏らしていたという。要するに、「小池vs安倍自民党」の構図は「偽装」だったのである。その証拠に、先の都連幹部がこんな「密約」を明かすのだ。
「小池氏が都知事選で勝った場合、東京10区の衆院補欠選挙が10月23日に行われます。そこに小池氏の秘書が出馬し、自民党がバックアップ態勢を作って当選させる、と約束した。なぜそんなことになったのか。選挙戦がスタートした頃に自民党が独自の世論調査を行ったところ、圧倒的に小池氏有利との結果が出たからです。それで手のひら返しをした、と‥‥」
ジャーナリスト・森省歩氏が、自民党のこうした対応を解説する。
「増田氏の決起大会に登場した石原慎太郎氏(83)が『大年増で厚化粧の女に任せるわけにはいかないよ』と暴言を吐き、息子の伸晃氏からも『今日をもって小池氏は自民党の人間ではない』と、除名をにおわす発言が飛び出した7月26日以降、自民党は急激に小池バッシングを強めた。しかし自民党はその直前まで、二股をかけていたのです」
仮に小池氏が勝ってもいいように、「保険」をかけていたというのだ。