日本政治が自民党のキックバック問題に揺れ、世界ではイスラエル軍によるイスラム組織ハマスへの攻撃が注目を浴びるなか、ロシアとの睨み合いが続くウクライナがエライことになっている。1年前、90%近くの国民の支持率を集めノーベル平和賞の呼び声さえあったゼレンスキー大統領が、2024年春の大統領選挙で「敗北」する可能性が囁かれているのだ。
その最大の理由とされているのが、ゼレンスキー氏とウクライナ軍トップのザルジニー総司令官の対立だ。日本の公安関係者の話。
「発端は11月、対ロ反転攻勢を『多少なりとも前進』としてきたゼレンスキーに対し、ザルジニー氏が英国のエコノミストによるインタビューで『ウクライナ軍の反転攻勢はうまくいかず行き詰まっている』などと断言したこと。これで国民の間でゼレンスキー氏に対する疑心暗鬼が生まれたんです」
それを裏付けるように、ゼレンスキー氏の支持率も急落。キーウ国際社会学研究所が国民に行った最新の世論調査では、ゼレンスキー氏を「信頼する」と答えた人は62%。1年前の84%から22ポイントも落ちている。
仏シンクタンク研究員もこう言う。
「総動員下、命をかけ最前線で指揮するザルジニー氏はいま、国民から絶大な人気を得ている。彼への支持があってこそ、ゼレンスキー政権がもっていると言えます。しかも、ザルジニー氏には大統領選への出馬まで囁かれていおり、ゼレンスキー氏は亀裂を否定するのに必死です」
ゼレンスキー氏は11月あたりから非常事態を理由に大統領選の延期を示唆しているが、これにも国内では不満が高まっているのだ。
先の日本の公安関係者は言う。
「戦況ではアメリカとEUからの支援が暗中模索状態で、アメリカなどは議会で多数を占める共和党の承認が得られずまったくメドが立たない。そんな中で、ただただゼレンスキー氏が『国境の完全回復を目指す』と言うだけでは、国民の理解は得られない」
一方、ロシアのプーチン大統領は来年の大統領選での再選を確信したかのように、年末恒例の世界中のメディアを招いての大規模記者会見では上機嫌だった。19日、「軍が最大50万人の追加動員を求めている」と会見で訴えていたゼレンスキー氏だが、今のウクライナ国民にその声が響くかは疑問。その先にはロシアの一斉侵攻の地獄が待っている。
(田村建光)