ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから、間もなく1年を迎える。
そんな中、1月22日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、首都キーウで開かれた会合で「今年中の勝利も可能だ」と発言。ウクライナ国防省の情報当局も「今年の春から初夏にかけてが、決定的な時期になるだろう」との見通しを示した。
ウクライナ軍とロシア軍の内部情報や最新動静に詳しい国際軍事アナリストは、
「ズバリ今年3月、ウクライナ軍はロシアが併合を宣言した東部4州(ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)の大規模奪還作戦を開始します」
極秘作戦が展開されるというのだが、その後の戦局を次のように予測している。
ウクライナ軍は首都キーウをはじめとする空の防御を固める一方、ドネツク州とヘルソン州に挟まれたザポリージャ州に進撃し、まずはロシア軍の補給路を断つ。その上で、北東方面(ドネツク州、ルハンスク州)のロシア軍と南西方面(ヘルソン州)のロシア軍を敗走に追い込む。戦局は終始、欧米諸国からの武器供与を受けたウクライナ軍の優勢で展開され、場合によってはクリミア半島の奪還に至る可能性すらある──。
ただし、この大規模奪還作戦にはウクライナのみならず、全世界にとっても深刻かつ重大なリスクも存在する、というのだ。国際軍事アナリストが続ける。
「問題は、一連の大規模奪還作戦でウクライナ軍が勝ちすぎた場合です。というのも、この時、メンツを丸潰れにされたプーチンが、戦術核の使用に踏み切る可能性があるからです。多くの場合、戦術核は侵攻する地域ではなく、撤収する地域に対して使用される。さらに言えば、限定的なこの戦術核の使用がトリガーとなって、ロシアとアメリカ、ロシアとNATO諸国による、戦略核の応酬に発展する可能性も否定できません。今春に始まる大規模奪還作戦は、世界の命運を決する戦いになるでしょう」
ウクライナ軍はどのような「勝ち方」をするのか。その際のロシア軍の「負け方」も含めて、和平交渉への道はかなりのナロウパスと言えそうだ。