オリックスが約1週間のハワイ優勝旅行を終えて12月17日に帰国した。コロナ禍で一昨年も昨年も見合わせており、チームとしては1996年以来のV旅行。選手は16人しか行かず、参加者はスタッフや家族を含めて170人ほどだった。一方、阪神は総勢約350人が同時期にハワイV旅行を楽しんだ。日本シリーズで負けたとはいえ、オリックスの選手たちはリーグ3連覇したのに、辞退が多いのが残念やった。
チーム最年長の安達了一が取材に応じて「来年はみんなで一緒に行きたい。頑張ったご褒美。みんなで行くことに意味がある」とコメントしていた。先輩にこんな思いをさせたらアカン。独身の若手選手はほとんど参加しなかったと聞く。確かに優勝旅行は家族や裏方さんのためという意味合いがある。でも、もっと大事なのは、仲間と喜びを分かち合うこと。優勝旅行に参加せず、1週間必死に練習したところで野球はうまくならん。リラックスした雰囲気で、ワイワイ楽しんだ方がリフレッシュできる。チームの結束にもつながるし「また来年も頑張ろう」となる。
僕らの阪急ブレーブスの頃も優勝旅行はハワイやった。辞退する選手はほとんどおらんかった。今でもいい思い出になっている。ゴルフや海水浴、ショッピングをして、夕食後は麻雀卓を囲んだ。ネオン街に繰り出す人もいたけど、英語も話せないから、夜はホテルから出なかった。「お前らハワイまで来て、麻雀か」と笑われたのも思い出のひとつ。今考えると不思議やね。わざわざ日本から麻雀セットを持ち込んだのか、ホテルに置いてあったのか。いずれにしろ、1年間、同じ目標に向かって戦ったチームメートと過ごす時間は有意義やった。
オリックスと阪神の優勝旅行は、関西のスポーツ紙の扱いも大きな差があった。オリックスはエースの山本由伸がMLBとの交渉で不在だったこともあるけど、話題自体が乏しかった。ほんまはそういう時こそ、中嶋監督が頑張らないとアカン。東北出身で口数が少ないとか、人前に出るのが苦手とか関係ない。もっとメディアにサービス精神を見せてほしい。僕らの頃の上田利治監督は「ええで、ええで」といろんな選手をマスコミに売り込んでいた。オリックスでは仰木彬監督も話題作りが得意やった。中嶋監督は3連覇に導いた手腕は立派やけど、そのあたりはまだ物足りなさがある。プロ野球の監督はマスコミ対応も仕事のひとつやからね。
阪急の先輩として、中嶋監督にはもうひとつ注文がある。24年はなるべくOB会にも顔を出してほしい。23年は4年ぶりに阪急・オリックスのOB会が開催され、約100人が参加した。3連覇を達成したこともあって、初めて参加するという人もいた。僕も久々に会った先輩や後輩と話ができてうれしかった。みんな歳を取ってしまい、どこそこが痛いなど、体の話が多かったけど。みんな残念がっていたのが、阪急出身の中嶋監督が不在やったこと。あいさつの場を設けてOBみんなで祝福したかった。
その点、阪神の岡田監督は「アレ」で流行語大賞を受賞するなど、グラウンド外でも大活躍やった。24年もオリックスと阪神は優勝候補で、再び日本シリーズで関西決戦となる可能性がある。中嶋監督も岡田監督に負けない発信力を身につけてほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。