オリックスのリーグ3連覇がカウントダウンに入った。中嶋監督の就任1年目の2021年に前年最下位から立て直して、25年ぶりに優勝。昨年はソフトバンクとの壮絶な優勝争いを制して、今年はシーズン後半から独走態勢に入った。
エース・山本由伸を擁する先発ローテは間違いなく12球団最強。打線が3点取れば勝てる感じで、2点でも勝ちきる試合が多かった。高卒3年目の山下舜平大の160キロのストレートはほれぼれするし、左のエースの宮城も安定感抜群。後半戦は育成出身の23歳右腕の東も頭角を現してきた。先発だけでなく、リリーフ陣も盤石。打ち勝つチームでないので、めちゃくちゃ強い印象はないけど、負けないチームになった。
パ・リーグでの3連覇以上は90~94年に5連覇した西武以来。オリックスとしては、僕の現役時代の75~78年の阪急4連覇以来になる。オールドファンなら両チームの黄金時代のレギュラーの顔が浮かぶはず。西武なら秋山、清原、デストラーデのクリーンアップに、石毛、辻、伊東ら役者がそろっていた。阪急も僕や加藤、大熊さん、長池さん、高井さんらの名前がスラスラ出てくると思う。
ところが、今のオリックス打線は3連覇するようなチームなのに、レギュラーの顔が浮かばない。吉田正尚がメジャーに移籍した今年はなおさら。21年に本塁打王になったラオウこと、杉本も調子が悪かったらすぐに2軍に落とされる。FA移籍してきた森友哉も捕手で固定されているわけやないし、打順もコロコロ変わる。特に1、2番なんか、誰が打つかメンバー発表されるまでわからない。
仰木さんを彷彿させる猫の目打線で、ファンからはナカジマジックと称賛されている。僕は打線を固定しないことに関しては否定的やけど、これだけ実績を残すと認めざるをえない。調子だけでなく、相手投手との対戦データとか、いろんな要素で決めている。選手らも明日は何番打つのかわかっていないと思う。確かに打てない中でメンバーをひっきりなしに入れ替えて接戦をものにしてきた。でも、もうちょっと我慢強く使ってもいい。打順が固定されることで打席に向かうリズムも生まれるし、余裕も出てくる。
関西の2球団がともにリーグ制覇すれば、史上初めて。阪神が日本一になれば85年以来、38年ぶり。クライマックスシリーズがあるものの、日本シリーズでの頂上決戦となれば、大阪は盛り上がる。采配も岡田監督と中嶋監督は好対照。猫の目打線のオリックスと正反対に、阪神は近本、中野の1、2番、4番大山は不動。木浪もどんなに好調でも、8番から打順を上げようとしない。今年の阪神が12球団最多の四球を記録しているのも、それぞれの打者が役割を理解して落ち着いて打席に立てているからこそ。ボール球を簡単に振らないから本当に嫌らしい打線になった。
オリックスは阪神の投手陣からは3点取るのがやっとと思う。そうなると、オリックスの強力投手陣が粘っこい打線にどう立ち向かうか。力勝負でストライクゾーンに投げ込んでいく方が抑えられると思う。ボール球を使ってかわしにかかれば、阪神打線が球数を放らして得意の形に持ち込める。甲子園と京セラドームは阪神電車で乗り換えなしに行ける。なんば線シリーズ、ぜひ実現してほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。