「パ・リーグに火をつけたってのはね、昭和63年の10.19。代打決勝ヒットというかね。いつも閑古鳥が鳴いてる川崎球場が超満員!」
野球人生の最高の一打を問われ、逆転に繋がるプロ野球生活最後の打席を熱烈回顧したのは、元近鉄バファローズの梨田昌孝氏だ。1月8日に野球解説者・田尾安志氏のYouTubeチャンネル〈田尾安志【TAO CHANNEL】公式YouTube〉で語ったところによると、舞台は「10.19」と称される、1988年10月19日に川崎球場で行われたダブルヘッダー、近鉄VSロッテの第25・26戦。仰木彬監督率いる近鉄が連勝すればペナント制覇、有藤通世監督率いるロッテが1回でも勝つか引き分けるかで西武の優勝が決定する状況だった。
この年限りでの引退を決めていた梨田氏に代打が回ってきたのは、ダブルヘッダーの初戦。二死二塁、3-3で迎えた9回表である。引き分けで終わってしまえば、もうあとはない。梨田氏が回想する。
「センター前にポテンヒットを打ってね、あれで1試合目、勝ったんでね、これで優勝できるかなと思って」
近鉄は4-3で勝利するも、続く2戦目は4-4の同点のまま10回を迎え、時間切れ引き分けで涙を飲んだ。近鉄の屈辱は、翌1989年のペナント制覇によって晴らされることになったのである。
観客席だけでない。梨田氏の記憶には、場外の人だかりの光景も鮮明に焼きついていた。
「ライト前のマンションの屋上とかも人だかりで、こんなの見たことないです。あれでパ・リーグの人気に火がついたようなね」
(所ひで/ユーチューブライター)