年が明けた週末、地元にあるスーパー銭湯に出かけた。正月気分も終わり、いよいよ会社や学校が始まるとあって、いつになく人影はまばらだったが、大広間ではいつものように「銭湯アイドルグループ」によるステージが行われていた。
そんな銭湯アイドルグループの魁がいる。いつの日にかメジャーな舞台へ立とうと誓い合い、仲間とともにそんなステージを11年も続けてきた5人組歌謡グループ「純烈」だ。
そのメンバー・友井雄亮が都内で単独会見を開き、過去に交際していた女性に対するDVや金銭使い込みなどでグループを脱退し、芸能活動からの引退を発表。2019年1月11日のことだ。
純烈は前年暮れに、悲願だった「NHK紅白歌合戦」に出場。夢を諦めず歩んできた彼らの姿に、往年の女性ファンのみならず、中高年男性からも惜しみない拍手が送られた。
そんな晴れの舞台から、わずか10日後。投下された「文春砲」により、まさに絶頂からドン底へと突き落とされたメンバーたち。友井は「週刊文春」の記事について「全て事実」と認めた上で、DVについては、
「自分の弱さ(が招いた)。手を上げてしまったことは間違いありません。これ(報道)が、どこかで出るのではないかとヒヤヒヤしながら(舞台に)立っていました。傷つけてしまった女性、ご家族の方々に深くお詫び申し上げます」
ふり絞るような声でそう釈明し、頭を下げたのである。
この会見を受けて、4日後の1月15日に都内で記者会見に臨んだメンバーたちも、心境を吐露。
「なんとか嘘であってほしいと思ったけど、本人が事実と認めているので『お前、ちょっとこれは無理だよ』と。もう一緒にできない。バカヤローと言いました」(酒井一圭)
「友井は犯罪者ではないかもしれませんが、それに近いことをやっている。傷ついた女性もいますし、一緒に続けることは考えられませんでした」(小田井涼平)
残るメンバーの白川裕二郎、そして後上翔太も唇を噛み、目は真っ赤だ。この当時、4人の平均年齢は40歳。そして、ようやくつかんだ「紅白出場」の夢。長年、苦労をかけ続けた親にも孝行ができた、と喜んだ矢先のことだった。だからこそ、酒井は最後にこう締めくくった。
「これまで一生懸命、頑張ってきました。だから、ここで失速して笑われる人生は嫌です。心はポッキリ折れてしまったけど、またここから苦労元年だと思ってトコトンやる。今の僕らにはそれしかありません」
それから5年。昨年の紅白では新メンバー・岩永洋昭を加えた新体制で登場した。歌唱中に審査員にQRコードを読み取らせ、巨大なQRコードの横断幕も広げるド派手な演出に賛否の声はあったが、そんな姿にあの「トコトンやる」という言葉を思い返したのだった。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。