「良い守備から良い攻撃を」と、森保ジャパンの基盤になっているのは堅守である。ところがアジア杯グループリーグ2連戦(ベトナム、イラク)でともに2失点。しかもイラクに敗れグループリーグ1位通過の可能性も消滅した。
大会前、日本は断トツの優勝候補筆頭に挙げられていた。2022年W杯カタール大会でドイツ、スペインを撃破し、昨年からは日本代表史上最長の10連勝を記録したのだから当然といえば当然だ。では、そんな森保ジャパンに何が起きたのか。
あまりにも前評判が高いからなのか、対戦相手に徹底的に分析されている。日本の攻撃の中心である右サイドの伊東純也は完全に対策され、得意のスピードを封じられた。
イラクに至っては、前線に190㎝のアイメン・フセインを置きロングボールを多用し、日本の最終ラインを上げさせなかった。ラインを上げて中盤をコンパクトにし、激しいプレスからショートカウンターという日本の武器は封じられた。
日本はストロングポイントを消されただけではなく、イラク戦の2失点は右サイドを崩された。つまり右サイドバックの菅原由勢の裏を狙われた。ベトナム戦の2点目も菅原の裏を狙われ、ファウルで止めたセットプレーからの失点だった。
菅原の良さは攻撃力。その正確な右足のキックは大きな武器であり、伊東純也との連携もいい。ただ、裏を狙われているだけに、菅原は思い切って高いポジションを取れない。それが伊東との右サイドが機能していない原因のひとつでもある。
またGKの鈴木彩艶にも批判が集まっているが、彼は昨夏にベルギーのシント=トロイデンに移籍し、初めて所属クラブでレギュラーになったばかりの選手。もちろん身体能力が高く将来性もある。だからといって所属クラブでレギュラーになり10数試合出場したばかりの選手を、いきなり代表で先発させるのはどうだろうか。将来性があるから育てるというのであれば間違いだ。代表は選手を育てる場所ではない。育てるのはクラブである。
ただ、それ以上に気になったのがゲームの入り方である。イラクが開始早々から全開で入ってきたのに、日本は受けてしまった。それはベトナム戦も一緒で相手の様子を見ながら試合をしている。アルゼンチン代表やブラジル代表じゃあるまいし、受けて立つほどの力はまだない。
日本はチャンレンジャーであることを忘れている。優勝候補筆頭、史上最強と言われているが、それが本当かどうか試されるのが今回のアジア杯だ。
つまり王者として防衛するのではなく、アジア王者を目指しているチームだということを忘れている。
決勝トーナメントに入れば負ければ終わり。グループリーグでの受けて立つような戦いは命取りになる。試合開始早々、自分たちから仕掛ける、アクションを起こす。そんなアグレッシブサッカーが求められる。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。