寒い時期に気をつけたいのが「ヒートショック」だ。
これは、急激な気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こす健康リスク。短時間で血圧が乱高下すると、心臓や血管に大きな負担がかかり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳出血、大動脈解離といった重大な疾患を引き起こす原因となる。 厚生労働省の調査によると、入浴中の死亡者数は年間1万9000人以上にも上り、そのうちのほとんどが65歳以上の高齢者だという。
特に気をつけたいのが「冬場の浴室」だ。「ヒートショック」は、急激な温度変化によって引き起こされるため、温度差が大きい場所ほど、発生のリスクが高まるからである。
発症を防ぐためには入浴前の事前の準備が必要だ。まずは脱衣所に小型のヒーターを設置し、入浴前にあらかじめ電源を入れておく。浴室内は冷えているため、浴槽のフタを開けておくなどして浴室内を暖めておいたり、一番風呂を避けて二番目以降に入浴するといいだろう。
入浴前の十分な水分摂取も肝心だ。入浴中に汗をかくと、体内の水分が減少するため、血液はドロドロになる可能性が高い。ドロドロの血液は血管を詰まらせる原因となってしまうからだ。
他にも、入浴時間は、食後1時間以降を心がけてほしい。飲酒を伴わない食事でも、食後は消化器官に血液が集中し、血圧は低下しやすい傾向があるからだ。もちろん、入浴前後に飲酒は厳禁だ。
浴室以外にも気をつけてほしい場所が「冬場のトイレ」だ。小型のヒーターを設置して、便座の暖房機能を利用したりする方法が有効だ。
部屋の環境を整えるなど、事前の対策を万全にしてこの寒い冬を乗り切ろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。