大谷翔平が全国の小学生に贈ったニューバランス製グローブの扱いをめぐり、2人の市長の明暗が分かれている。
まず「小学生に贈られたグローブを小学生に渡さず私物化」と批判されているのが、大分県別府市の長野恭紘市長だ。
「日本大学でも野球をしていた」と自身のプロフィールを披露している長野市長は、
〈キター!私が見るだけではもったいない!という事で、市役所正面入口に当面飾ります!〉
市内の小学校に配布せず、市役所のガラスケースに展示した様子を自身のSNSにアップするや、「子供をないがしろにしている」と怒りを買い、SNSは大炎上。市長はこれに「渡さないとは言っていない。見てみたい市民に見てもらおうよ。そう言うのが教育ではないのかな?」と反論している。
と同時に、長野市長は1月末に市内の小学校に配る予定だったと弁明しているが、教育現場を何もわかっていない。小学校3年生や4年生が来年度のクラブ活動を決める見学や体験入部は1月下旬から2月に行われることが多く、一方で小学6年生は2月に入ると卒業関連行事で忙しくなり、課外活動で野球をする時間がない。
つまり長野市長の「大谷グローブ」私物化により、別府市内に暮らす野球初心者の小学3年生から卒業を控えた6年生までが揃って野球できる機会が奪われてしまったことになる。市内の保護者達が怒るのは当然で、それは大谷選手の「野球を通じて元気に楽しく日々を過ごしてもらえたら嬉しいです。このグローブを使っていた子供達と将来一緒に野球ができることを楽しみにしています!」というグローブを贈った趣旨と気持ちを踏みにじったに等しい。
対照的に「大谷グローブ」で小学生とキャッチボールを楽しんだのは、岡山県総社市の片岡総一市長。同じく自身のSNSにその様子の動画をアップしたが、こちらは豪速球を投げる将来有望な小学生が主役。大谷グローブを使いこなしている男児はなかなかの本格派右腕で、何年か後には甲子園に出場するのでは、と期待も抱かせる粋な投稿だった。
さらに1月中旬、大谷が寄贈したグローブについていた「野球しようぜ」のメッセージと「大谷選手の上半身写真」が印刷された商品タグが、フリマサイトに10万円で出品されていたのに続き、1月23日にはグローブに同封されていた大谷のA4サイズの手紙も、フリマサイトに9999円で出品された。
ちなみにこの「大谷の手紙」は、大谷グローブが届いた際に児童全員に渡されたコピー用紙で、小学生がいる全世帯に配られている。各市区町村の教育委員会や小学校は「大谷の手紙」をウェブサイト上で公開しており、その画像を保存、プリントアウトすれば手に入る。
商品タグを10万円で出品した「のん」と名乗るアカウントについては、過去の販売履歴を調べたネットユーザー達がいて、学校の備品や女児の古着を出品していることが明らかになった。「ある地域の教師が横領、転売している可能性が高い」として、転売ヤー像の特定が進んでいる。
悪質な転売ヤーが窃盗や横領容疑で逮捕されるところまで堕ちれば、職権を乱用する大人達の「大谷グローブ狂想曲」もさすがに落ち着くだろうか。
(那須優子)