不安な将来に向けて少しでも蓄えを増やそうと、資産運用を始める人が増えているという。今年1月から「新NISA(少額投資非課税制度)」も始まるなど、投資ムードが高まりを見せているが、新手の投資詐欺が乱立しているというのだ。
経済アナリストの森永康平氏が吐露する。
「昨年頃から、何者かがSNS上で私の偽アカウントを作成して、投資詐欺を企てていることは確認していました。こうした事実を把握した直後から私は、自身のユーチューブやレギュラー出演するラジオ番組などのメディアを通じて、視聴者やリスナーの方に向け再三にわたって、怪しい投資広告には注意するよう呼びかけているのですが、『詐欺とは見抜けずに、てっきり森永さんが推奨している投資案件の広告だと思ってクリックしたら、まんまと金を騙し取られてしまった』との被害報告が、連日のように私の元に届いています。現在、私が把握している限りでも詐欺の被害総額は5000万円近くに上ります。当然のことながら、私がこのようないかがわしい内容の勧誘をすることは絶対にありえません。このまま放置しておけば、世間の方々から『森永康平は、こんな怪しい投資の勧誘で儲けているのか』と、私自身の風評被害にもつながりかねません。本当に困っているのが現状です‥‥」
しかし、即座にこうした投資詐欺を撲滅することは、極めて困難だという。捜査関係者が説明する。
「今回の投資詐欺事件については、全国の所轄署に相当数の相談及び被害届が提出されており、森永氏以外にも複数の著名人の名前が悪用されていることも確認している。近年、警察当局もSNSを利用した投資詐欺については特に目を光らせているが、そもそもSNS上に掲載されている詐欺広告の記事を削除するには、まずは名前を悪用されている本人みずからSNSの運営会社に通報する必要があるのです。ところが、本人確認が必要だったりの手続きが煩雑で、詐欺広告の1つを削除することさえも相当の時間を要する。その間にも詐欺グループが次々と手を変え品を変え、新しい手口を仕掛けてくるというのが実情です」
匿名性が高いネットを舞台にした犯罪ということも相まって、捜査自体が後手に回っているようだが、先の捜査関係者は、さらなる盲点を指摘する。
「警察庁や総務省でもネット上の違法情報や有害情報に関する専用の窓口を設けていますが、投資詐欺グループを一網打尽に摘発し、逮捕することは非常に難しい。というのも、詐欺グループの拠点の多くは東南アジア諸国にあり、海外のサーバーを経由していることもあって、潜伏先を探し出し、特定することも容易ではない。例えばタイからマレーシアといった国をまたいで、定期的に潜伏先を変えていることも捜査を進める上で大きなハードルになっています」
詐欺被害に遭わないためには、どうすればいいのか?
森永氏が忠告する。
「私以外にも投資詐欺グループに名前を悪用されている方々が、SNSなどを通じて、投資詐欺の実態について情報発信しているので、うまい儲け話があっても即座に飛びついてはいけない。まずはネット検索すれば、詐欺だということは見抜けるはずです。対面の投資セミナーや、万が一、誤って投資詐欺を目当てにしたLINEのグループに参加してしまって、複数の人たちから勧誘攻撃を受けたとしても、その場の空気に流されるのではなく、即決はせずに、一度持ち帰ることです。そもそも投資の世界において、〝絶対〟なんてことはありません。だから、〈必ず儲かる〉〈絶対に損しない〉〈次に爆上がりする〉という文言があったら100%詐欺だと思って間違いないです」
うまい儲け話には必ず落とし穴があるということだ。