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世界の福本豊<プロ野球“足攻爆談!”>「まだセ・パで差別があるんかな?」

 今年の野球殿堂入りが1月18日に発表され、プレーヤー部門で谷繁元信と黒田博樹が選ばれた。エキスパート部門は最多得票数の掛布雅之はあと2票届かず、該当者はいなかった。同部門のブーマーの得票数が去年より12票しか増えない52票にとどまったのは残念やった。去年はバースとラミレスの外国人2人が選ばれただけに、今年こそと期待していたんや。

 阪急のチームメイトだったブーマーは殿堂入りするべき。その声がなかなか広がらないのがもどかしい。1984年にバースより1年早く外国人選手初の三冠王になって、バースの6年より長い10年も日本でプレーした。本塁打王1回、首位打者2回、打点王4回の実績でなんで入らないのか。バースもラミレスもセ・リーグで活躍しただけに、パ・リーグ出身としては「セとパの人気の差か」と勘ぐってしまう。

 殿堂入りの前後もメディアでは「選ばれるべき人」の議論はまったくなく、発表された時だけ谷繁と黒田をたたえる記事やニュースが取り上げられていた。それぞれの候補者をもっとアピール合戦するような場があればいいんやけど。

 エキスパート部門の投票権は、過去に殿堂入りした者と、野球報道年数30年以上の委員が持っており、75%以上の得票で殿堂入りとなる。該当者なしだと、翌年も票が他に流れにくいので、ますます高い壁となる。ブーマーは今年の票数より倍増しなアカン。毎年、ブーマーと同じく僕が投票しつづけている加藤英司は、19票でもっとしんどい。

 もうひとり、殿堂入りに値する人物として強く推薦したいのが、昨年3月に亡くなったチコさん。阪急の名物通訳だったバルボン氏を僕らは「チコさん」と呼んで慕っていた。ブーマーがヒーローインタビューで一生懸命しゃべっても「うれしい、言うとるよ」と、簡単な関西弁の一言で済まして、ファンもそれでよしとしていた。

 最近の人には、面白い外国人のおっちゃんというイメージしかないかもしれんけど、現役時代の実績も素晴らしい。キューバからやってきて1955年から11年間プレー。外国人選手で初めて通算1000安打をマークして、3年連続で盗塁王にも輝いた。アメリカでも活躍できる実力があったのに、人種差別にあって難しい面があったと思う。当時の話を聞くと、同じ人間がするとは思えない扱いを受けていたという。日本で僕らが普通に接すると涙を流して喜んでいた。故国・キューバにはたった1回しか帰れず、キューバ代表のスポーツチームが来日すると、親戚の近況などを聞いて回っていた。あの笑顔の奥に壮絶な過去があった。本人は亡くなってしまったけど、日本で結婚した家族も喜ぶはず。まずは特別表彰の候補に加えてほしい。

 小さな声かもしれんけど、こうやって言い続けるのが僕らの役目。ソフトバンクの和田を巻き込んだ、FAの人的補償の騒動ではようやく選手会もNPBも改革に動こうとしている。このコラムで訴えてきたように、人的補償は言葉も悪いし、誰が考えてもおかしい制度。FAで好きな球団に入る選手の代わりに、功労者が希望しない球団に行かされるのは理不尽すぎる。野球殿堂についても、選出方法や候補者をもっと議論する場があってもいい。僕はブーマーとチコさんの殿堂入りをずっと言い続ける。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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