ドジャース入りした大谷の契約金は1000億円超。実にスカイツリー2.5基分の巨額マネーを動かしたのは、選手に代わり交渉の窓口に立った代理人だ。手練手管の交渉術で巨額のマネーを得ることもあれば、拝金主義に前のめりすぎて裏目に出ることも‥‥。「天使か悪魔か」、その実像をスッパ抜く!
次から次に新天地を決めたサムライたち。そのお祝いムードの蚊帳の外に置かれているのが藤浪晋太郎(29)だ。スポーツ紙デスクが解説する。
「移籍先の交渉にモタついています。オフにオリオールズをFAになりましたが、かねてより現地メディアでは同球団との再契約を予想する報道が出回っていました。ところが、1月下旬に入っても去就は不透明なまま。他の日本人選手が契約をまとめるのをよそに、阪神のファーム施設がある鳴尾浜で黙々と自主トレに励んでいます」
当初入団したアスレチックスでは、160キロ超の剛速球と鋭い変化球を武器に先発投手として開幕ロースター入りを果たすも、阪神時代から課題だった「ノーコン病」を克服できず防御率8点台の大炎上。一方で、7月にトレード移籍したオリオールズではリリーフとして防御率4点台に回復。30試合に登板してチームの地区優勝に貢献した。やっとこさ、シーズン後半にアジャストしたにもかかわらず、移籍先が決まらない背景には、移籍交渉を一任する敏腕代理人の影がチラついているという。大リーグ評論家の友成那智氏が語る。
「藤浪の代理人を務めるスコット・ボラス氏(71)です。彼の移籍交渉が長期化するのは珍しくない。1月26日時点で、FAランキングトップ10に入っていながら移籍先が決まっていないベリンジャー(28)、スネル(31)、チャップマン(30)、モンゴメリー(31)もボラス氏の顧客。トップ10の選手はクリスマス休暇を目安に契約がまとまるのが慣例ですが、好条件を引き出すために十八番の〝粘り腰〟を発揮しているのでしょう。22年にブルージェイズに移籍した菊池雄星(32)も、3月中旬までかかりましたからね」
その粘り強い交渉術に振り回された選手は枚挙に暇なし。06年オフ、6年総額約60億円でレッドソックスに移籍した松坂大輔(43)も泣かされた1人だ。在米スポーツライターが振り返る。
「当時のポスティングは、独占交渉権を獲得した球団としか交渉できないシステムでした。競合する球団を引き合いに出せなかっただけに、金額交渉が難航。交渉期限の数分前になっても契約がまとまらなかったので、松坂本人から『とにかく、契約を最優先させてくれ!』と半ベソで懇願されて話をまとめたという逸話まである。交渉決裂となれば、MLBを断念せざるをえませんでしたが、契約金額を釣り上げるために、ボラス氏が球団を相手に〝チキンレース〟を仕掛けていたんです」
吸血鬼─。こう称されるのもカネに執着しすぎる姿勢が由来とされるが、クライアントが望む以上の巨額契約をまとめてしまう剛腕は並ではない。いつしか米球界のマネーゲームを支配するまでの影響力を手にしていたようで、
「40年以上のキャリアで各球団の編成責任者とツーカーの関係性を築いています。それだけに、顧客をメジャー契約でねじ込むのもお茶の子さいさい。球団側としても、ボラスの抱える大物選手を融通してもらうために『貸し』を作りたい思惑がありますからね。もちろん、恩を売りたい球団が増えれば、引き合い件数も増える。競合すれば、自然と契約金額も膨らみます。これが、NPBで戦力外同然だった藤浪が昨季4億円超の契約を得られたカラクリです」(在米スポーツライター)
キャンプイン直前でも慌ててしまってはコトを仕損じる、そんな状況のようなのだ。