性加害疑惑報道を受け、アジアカップの日本代表から離脱したMF伊東純也(スタッド・ランス)と代理人が、被害を訴える女性2人を虚偽告訴罪で告訴するという、泥沼の様相を呈している。さらに名誉を傷つけられたとして、近日中に損害賠償請求の民事訴訟を起こすと、一部メディアが報じている。もはや司法判断を仰がない限り、伊東の代表復帰とクラブチーム復帰は難しいようだ。
日本サッカー協会の田嶋幸三会長は2月2日、スポンサーの意向が伊東離脱に影響したのかを記者に問われた際に、
「ゼロではない。パートナーの皆さんへ配慮をしたのも事実。対応が二転三転したことをおわび申し上げる」
と認めて謝罪している。
さらに田嶋会長は、現地時間4日の会見でも伊東について言及。
「ものすごい痩せたなという気がした。彼は言わないですが、言われなきことを感じてると思う」
面会した際の様子をそう明かし、所属するスタッド・ランスも同日、ホームで開催されたトゥールーズ戦の招集メンバーから伊東を外している。
そんな窮地の伊東の追い風になるかもしれないのが、フランス特有の「侮辱罪」「名誉毀損罪」だ。
昨年3月、SNS上でマクロン大統領を「クズ」呼ばわりした女性活動家が侮辱罪で身柄拘束、送検された。マクロン大統領が大人げないようにも見えるが、この侮辱罪の適用は効果抜群。当時、辻仁成や杏らパリ在住の日本人も巻き込まれた「パリ暴動」が鎮静化したからだ。
フランスでは事実に基づかない暴言、罵りに「侮辱罪」と「名誉毀損罪」のどちらも適用され、特に公然の場で誹謗中傷をした場合は侮辱罪、名誉毀損罪それぞれ1万2000ユーロ(2月4日のレートで約190万円)、合計2万4000ユーロ(同380万円)の罰金刑が課される。これとは別に損害賠償請求訴訟を起こすことができ、賠償金の取り立ては日本の司法より厳しい。
もし伊東が所属するスタッド・ランス側が今後「女性2人が事実と異なる発言でクラブチームが損害を被った」と判断した場合、フランスで侮辱罪、名誉毀損罪の刑事訴訟、損害賠償請求の民事訴訟を起こされる可能性がある。
過去にカルロス・ゴーンの逃亡劇で失態を晒した日本の司法制度でグレー裁定されるより、男女の愛憎劇には手慣れたフランスの司法制度で白黒はっきりつけてもらった方が、伊東とスポンサーにとっても禍根を残さないだろう。
(那須優子)