誰がここまで苦戦すると予想しただろうか。アジア杯カタール大会、日本はグループリーグを2勝1敗の2位で乗り切り決勝トーナメント進出を決めた。戦前の予想で圧倒的な優勝候補に推されていた日本がなぜ苦戦したのか。
まず最初に言えることは、対戦相手が日本を完全に分析してきたこと。日本の攻撃のストロングである右サイドの攻撃は完全にふさがれた。特に攻撃の中心である伊東純也は、縦への突破もサイドバックの菅原由勢とのコンビネーションも抑えられた。
逆に対戦相手は日本の右サイドから攻めてきたため、日本の右サイドの攻撃はほぼ機能しなかった。
ワントップも機能しなかった。初戦のベトナム戦で先発した細谷真大は前線で孤立。2戦目のイラク戦で先発した浅野拓磨、途中出場した上田綺世も相手のDFに抑え込まれていた。頼みの久保建英もトップ下ではマークがきつく、なかなか前を向いてプレーさせてもらえなかった。
森保監督の采配も後手を踏んでいる。初戦のベトナム戦でトップ下でプレーし2得点1アシストと活躍した南野拓実を、2戦目のイラク戦ではこれまであまり機能していない左サイドで起用。サイドに張らず中に入ってきて久保とポジションがかぶり、日本の武器である2列目が機能しなかった。
さらにイラクが逃げ切りを図り、5バックにしてスペースを消した後にスピードのある前田大然を投入している。旗手怜央を一緒に投入したことで、セルティックコンビで何とか崩して欲しかったのか。ただ、スペースを消されてからの前田の投入は疑問だ。
それ以上に気になるのは選手のコンディションがバラバラだということ。国内組はシーズンが終わってからの代表戦ということで問題ないが、海外組はシーズン真っ只中。しかも国によって日程も違う。フランスやドイツは昨年12月21日の試合後、ウインターブレイクの休みに入り早めに帰国してコンディションを整えられたが、イングランド、スペイン、スコットランドといったリーグの選手は1月3日の試合後に代表に合流している。
選手の中には怪我を抱えている選手も多く、中山雄太は12日まで別メニュー。ケガ明けの冨安健洋も初戦には出場せず、久保、三笘薫は負傷を抱はえて合流し、三笘に至ってはまだ1分も試合に出ていない。初戦、2戦目と先発した板倉滉は、昨年10月に手術を受け約3カ月ぶりの公式戦で、3戦目のインドネシア戦は「コンディションの問題」を理由にベンチ外だった。
逆にフランスリーグの伊東、南野、中村敬斗はコンディションがよく、ブンデスリーガの堂安律も明らかにキレのある動きを見せている。
グループリーグ2位通過は予想外だったが、決勝トーナメント1回戦まで中6日ある。その間にどこまで選手のコンディションを整えることができるか。
負けたら終わりのトーナメント戦。ここからが本当の勝負だ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。