金王朝にとって南北統一は悲願だったが、韓国の尹錫悦政権は強硬姿勢を貫き、我慢の限界に達した金正恩は、昨年12月末に「韓国を平和的な統一の相手とは見なさない」と宣戦布告。
年明けの1月5日から3日間で350発以上の砲弾を海上の境界近くに発射し、韓国を挑発した。
一方、韓国は2月14日にキューバと国交を樹立したことを電撃発表、衝撃が走る。
「北朝鮮とキューバは『兄弟国』と言われるほど友好関係にあった。外交的な打撃も大きく、北朝鮮は反撃の一手に出たいところ。そこで、日米韓の3カ国のトライアングルで揺さぶりやすいのが、拉致問題で『対話』に前向きな日本というわけです」(外務省関係者)
その北朝鮮には、大国ロシアが「援軍」として手を差し伸べている。山田氏はこう指摘する。
「軍事と経済の両面で協力を深め、ロシアとの距離を急速に縮めています。2月18日には、ロシアのプーチン大統領(71)から金正恩にロシア製の専用車が贈られました。ペスコフ大統領報道官も3月のロシア大統領選挙の後に、00年7月以来となるプーチン大統領が訪朝することを示唆。心強い〝後ろ盾〟を得たことで、国際情勢にある程度の余裕が出てきて、日本や韓国に揺さぶりをかけているとみられます」
ロシアの出現も脅威だが、尹錫悦大統領(63)は日本を「パートナー」と呼び、未来志向を強調しているだけに、北朝鮮と日本がホットラインを結ぶのは許せないだろう。だが、拉致問題は日本政府の最重要課題であり、人権侵害に口をはさむことはできず、
「尹大統領は複雑な心境のようです。情報機関を使って、岸田総理の北朝鮮への動向について、あっちこっちに探りを入れている」(外務省関係者)という。
さらに、各国に影響を及ぼすのが、11月のアメリカ大統領選挙の行方だ。トランプ新政権が誕生した場合、特に北朝鮮と米国の関係に変化が起きると、山田氏が解説する。
「バイデン政権が始動してから、北朝鮮政策の優先度は低くて軽視されていますが、ドナルド・トランプ前大統領(77)は、議論ができる相手だと思っています。米国は世界の警察なんて偉そうに言っていますが、要はお金ですよ。バイデン政権が放置したことで、北朝鮮は更地のように手つかずの状態で、石炭とか色々な資源があり、トランプはビジネスチャンスと捉えています。できることなら、個人的にも儲かるのでトランプタワーだって北朝鮮に建てたいはず。国際情勢を考えると、しがらみもあって秩序とか同盟を重視しますが、トランプにその感覚はない。北朝鮮にとっては経済制裁の解除も含めて、1対1での米朝交渉の再開に期待しているのではないでしょうか」
トランプ新政権は〝瀕死〟の岸田政権にも、ウルトラCをもたらす可能性がある。
「内閣支持率の下落が止まらず、秋に予定されている自民党総裁選まで岸田政権はもたないという声が出ています。しかし、岸田総理が拉致問題を進展させ、さらに北朝鮮と米国との間を取り持つ懸け橋になれば、大統領選に勝利したトランプから、『日本はキシダじゃないとダメだ』とお墨付きが出ることも。そうすれば岸田政権が生き延びるシナリオも浮上してきます」(山田氏)
〝外交の岸田〟とアピールする絶好のチャンスには違いないのだが‥‥。政治利用ではない拉致問題の一刻も早い進展と解決を望むばかりだ。