「増税メガネ」と揶揄されて、過剰反応した岸田文雄総理。自身が率いた自民党派閥「宏池会」(岸田派)の解散を表明したほか、衆院政治倫理審査会に出席するなど、自民党内では「リアクション政治家」と呼ばれている。
芸能界では「何かに対して過剰な反応をする芸風の芸人」のことを「リアクション芸人」と呼んでいるが、それにちなんだアダ名の命名だ。
3月2日の衆院予算委員会でも、質問した立憲民主党の馬淵澄夫氏は、
「初っ端で『火の玉』とか『先頭に立つ』とか勇ましい言葉を発するが、その後は全く無関心で放置。窮地に陥るとサプライズ。サプライズでは問題解決にならない」
そう言って、岸田総理の政治姿勢を斬り捨てた。これに岸田総理は「ご指摘はあたらない」と反論したものの、朝日新聞によると、自民党閣僚経験者も、
「総理の(政倫審出席という)決断は評価するが、その後は成り行き任せ。『必ず成し遂げる』『みんなついてこい』というエネルギーが足りない」
と評する。
岸田総理本人は派閥解散や政倫審出席を自身の「決断」と意気軒高のようだが、リアクション芸人のように、対応は受け身。たまに唐突に「決断」を見せるものの、総じて指導力が足りないと、党内では映っている。このため、自民党内では「党のガバナンス(統治)が崩壊している」という声が多くなっている。
令和6年度の予算案が衆院を通過したことで、自民党中堅議員は、
「これで『ポスト岸田』の号砲が鳴った」
支持率低迷が続く岸田総理では次期総選挙は戦えない、との認識から出た言葉だ。岸田総理に残された時間は少ない。いつまでも「リアクション政治家」では、現状打破はとうてい無理だろう。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)