「そんなライブをやって、はたしてお客さんは集まるのか」
普通の人なら必ずクビをひねりそうなライブが、3月21日に開かれる。それは「なつかしのおカルト芸人ライブ」なるものだ。
「おカルト芸人」とは、別に超能力を使うような「オカルト」とはいっさい関係がない。いわゆる落語やしゃべくり漫才、コントのような「正統派」のお笑いではなく、どこか「邪道」というか「異端」というか、脇道にそれた匂いを感じさせる芸人のことだ。売れている芸人ならば、江頭2:50がそれにあたるだろうか。つまりは「カルト芸人」である。
このライブに登場する芸人は全て、キャリア30年以上。その芸風をずっと貫いている。「売れていない」状態がずっと続きながらもくじけないその「生きる姿勢」に敬意を表し、ライブを主催するというコラムニストの山中伊知郎氏によれば、
「開く動機としては、私が一方的に『おカルト芸人』さんたちに親近感を抱いていたことがあります。実は私も、山中企画という『ひとり出版社』を作り、十数年もせっせとマイナーな本を作り続けていますが、とにかくぜんぜん売れない。その現状が似ていますね。売れないのにやめなかったな、という誇らしい気持ちもどこかにあります。『みんな、ここまでよくやったよ』という気持ちを『おカルト芸人』さんたちと会って共感したかった。彼らのネタ以上に、歩んできた人生を味わいたかったんですね」
ある意味、深いというか…。
思い付きでライブ開催を決め、10組近い芸人に出演交渉をし、5組から出演OKの返事をもらったというが、山中氏には懸念があるという。
「1時間半の上演を予定しているのですが、とにかくネタが短い人が多いため、30分か40分で終わっちゃうかもしれない。そうなったらみんなで集団トークをしてもらい、時間を延ばすしかない。だから面白い、という見方もできるんですが…」
そんな出演者の顔ぶれはというと、まずは「げんしじん」。かつてはあの坂田利夫に弟子入りしたといい、「なんじゃそりゃそりゃワケわからん、プルピンポン」で始まる不条理ギャグが特徴だ。山中氏によれば、
「正直言って、ネタのオチはどこが面白いんだか全くわけわからんのが、アタマの痛いところです」
へらちょんぺ(写真)は1990年代から2000年代にかけて「タモリのスーパーボキャブラ天国」や「エンタの神様」などに、しばしば出演。「わずか1秒で着ているものを全部脱ぐネタ」や「頭からパンツをはくネタ」などが好評だった。マジックのほか、最近は腹話術もやるというが、
「先日、ほぼ20年ぶりくらいに会った時に『もう、今が最高に元気です』と、とても前向き。たとえギャラが『投げ銭』だけの営業で呼ばれても、しっかりウケを取って帰ってくるらしいです。ただし『全部脱ぐネタ』でもせいぜい1~2分しかもたないので、周りがどうフォローして時間を引き延ばすか、アタマの痛いところです」
アタマの痛い2連発だが、残りの3人の出演者はGO!ヒロミ44’、ギブ大久保、原田17才。
「おカルト芸人」たちの30年以上の歩みを味わいたい人は、足を運んでみてはどうだろう。
「たぶん、客席はガラガラだから(笑)」(山中氏)
会場は「ミニホール新宿Fu-」、午後7時開演(入場料2000円)だ。