大谷翔平式か、それとも野村克也理論か。それが問題だ。ヤクルト・村上宗隆の長尺バット使用を不安視する声が漏れている。
村上は3月3日の中日とのオープン戦(ナゴヤ)で、初回二死一塁の場面で小笠原慎之介から2ランホームランを放った。キャンプでは左臀部の張りを訴えて一時離脱したが、侍ジャパンの一員として3月6、7日の欧州代表との強化試合、その先に控える開幕に向けて調子を上げてきた。
今季の村上はさらなる打撃の進化を求めて、バットを従来より1.3センチ長いものを使い始めた。一見、わずかの差のようだが、微妙な感触を大事にする打者にとっては大きな差だ。これは昨季、使用するバットを2.5センチ長くし、メジャーリーグで日本人初の本塁打王となった大谷翔平の影響があったため。村上本人も「今のところはいい感じです」と好感触を得ている様子だ。
だが、この長尺バットが不評だという。ある球団OBはその理由のひとつに、野村克也氏の影響を挙げる。
「ノムさんはヤクルト監督時代、選手にバットの重要性を説いていた。特に長さとグリップの太さには独自の理論を展開していたね。『長くてグリップの細いバットを使う必要はない。そんなバットを使いこなすのは難しい。太くて短いバットで十分。オレはそんなバットで三冠王になった』とミーティングで話してきた。その野村理論はチーム内に受け継がれていますからね。村上クラスの選手なら、あえて難しいバットなんて使う必要はないのに」
ただ、いくら首脳陣でも一昨季に令和初、史上最年少の三冠王に輝いた村上に対し、バットには注文をつけづらい。しかも、今や世界のスーパースターになった大谷の名前まで持ち出されては、反対できる雰囲気はない。前出のOBはさらに不安を募らせる。
「メジャーを意識している村上は、大谷のようにローボールを救い上げてホームランにしたいのでしょうね。でも、それで本来の打撃を忘れては何にもならない」
スポーツ紙遊軍記者も、
「村上は村上。大谷に憧れるのはやめましょう。憧れたら超えられない」
と、WBC決勝戦前に大谷が発したセリフを引き合いに出して、警鐘を鳴らす。長尺バット使用の結果が注目される。
(阿部勝彦)