2月27日以降、千葉県の南部や東方沖を震源とする地震が相次ぐ中、国土地理院は3月1日、その見解を公表した。房総半島沖のプレート境界で「スロースリップ」と呼ばれる現象が検出され、これが地震を頻発させている可能性がある、というものだ。
スロースリップはプレート(岩盤)が境界面でゆっくりと滑る現象。房総半島沖(千葉県東方沖)ではフィリピン海プレートが陸のプレートの下に沈み込んでいるが、圧迫で歪められた陸のプレートが反対方向にゆっくりと滑り出しているというのだ。
政府は「千葉県を中心とする地域では今後も震度5弱程度の強い揺れに注意が必要」と警戒を呼びかけているが、専門家の間からは「今回のスロースリップは2つの大惨事を誘発する危険性がある」との指摘が飛び出している。
想定される第一の大惨事は、スロースリップによる巨大海底地震の発生だ。
房総半島沖のプレート境界では、2018年にもスロースリップが立て続けに確認された。実はこの時、政府の地震本部(地震調査研究推進本部)はウェブサイト上のコラム「気になる地震、スロースリップ」で、スロースリップが巨大海底地震を引き起こす可能性を、過去の事例まで摘示しつつ、秘かに指摘していたのだ。全国紙科学部記者が明かす。
「地震本部のコラムは、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震をはじめ、全世界での発生事例を世界地図上に示した上で、〈私たちの足元で静かに発生するスロースリップ。その発生は何を意味するのか。今後の研究成果が期待されます〉と結んでいる。世の中の反響を考慮してか、慎重な言い回しになっていますが、地震本部がここまで踏み込んだ指摘を行うのはまさに異例。裏を返せば、切迫した危機感の表れと言っていいでしょう」
その2018年に続く、今回のスロースリップである。地震学の専門家も、次のように警鐘を鳴らしている。
「スロースリップが起きている房総半島沖は『3.11の割れ残り部分』に該当し、多くの専門家が『陸のプレートはいずれ激しく跳ね上がる』と指摘しています。その場合の地震の規模はマグニチュード8クラスと想定され、千葉県のみならず、首都圏が広範囲にわたって激しい揺れと大きな津波に襲われることになります」
ゆめゆめ警戒を怠ってはならない、ということだ。(後編へつづく)
(石森巌)