名古屋市のスーパーマーケットが3月初め、POPに「53年間のロングセラーも3月で終売」と書いたのを機に、明治のキャンディー「チェルシー」終売の悲報はSNSを通じて日本中を駆け巡った。
スーパーやドラッグストア、100円均一ショップのチェルシーの棚はその日のうちに空となり、フリマサイトでは100均で売られていたチェルシーになんと、10袋29999円の高値がつけられている。保存状態も衛生状態も定かでない「賞味期限2024年4月」の怪しいチェルシーですら、1500円前後で続々と落札されている。
転売ヤーと一部の消費者だけが大騒ぎするのを横目に、新型コロナの前まではチェルシーをリュックに入れていた子供達が、二度とチェルシーを食べることはないのだろう。
明治のお菓子がいきなり終売になるのは、チェルシーが初めてではない。2015年には大正時代からのロングセラー「カルミン」、2017年8月にはスナック菓子「ピックアップ」が販売終了になった。2020年8月には同じくスナック菓子の「カール」が関西以西でのみの販売となり、「キシリッシュガム」は昨年からグミに変わった。
今回のチェルシー製造終了で、明治ではキャンディーとガムの取り扱いがなくなることになる。
そして「ヨーグレット」「ハイレモン」「コーラパンチ」も明治の公式サイトで販売終了が発表され、同社サイトから姿を消していることをご存知だろうか。
嫌な予感はあった。昨年のゴールデンウィーク、立ち寄ったスーパーでヨーグレットとハイレモン、コーラパンチが「在庫処分」と書かれて山積みになっていたのだ。「カールショック」を思い出し、全種類を買って帰ったが、これがコーラパンチとの今生の別れになるとは思わなかった。
だが、ドラッグストアやコンビニに行けば、ヨーグレットやハイレモンは今でも販売されている。ちょうど1年前の2023年3月、明治は菓子事業の見直しを進め、主力のチョコレートやグミ菓子、ヨーグルトなどに集中する経営方針を発表。ヨーグレットやハイレモンを作る子会社、明治産業(長野県須坂市)の全株式が5月10日付で丸紅へ売却された。
明治産業は社名を「アトリオン製菓株式会社」に変更し、ヨーグレットやハイレモンの製造販売を続けている。まるで「ジェネリック」のようだが、工場が変わったわけではないので、味もパッケージも昔と変わらない。さらにヨーグレット、ハイレモンは丸紅の販売ルートを生かし、海外販路も検討されている。
記者が遭遇した「在庫処分」は、旧パッケージを売り切るためのセールだったようだ。なお、口の中に入れると弾けるキャンディーも、同社で引き続き製造販売。サイコロキャラメルは明治の生産子会社だった道南食品が、北海道限定商品として製造販売を続けている。
不幸なことに、チェルシーだけは明治の工場で作られていた「箱入り娘」だったために、同社の菓子事業の整理に伴い、姿を消すことになってしまった…。
(那須優子)