ドジャースの大谷翔平の突然の結婚発表は驚いた。野球以外には興味がないと思っていた。恋愛もしていて、大谷も人の子やった。愛犬のデコピンは癒やしにはなるけど、会話はできない。奥さんと話しながら食べると食事もおいしい。野球にもプラスになるはず。それにしても、まともな噂一つ立たずに、ここまでうまく隠し通せたものやと感心する。マスコミは追いかけ回さず、そっと見守ってほしい。
日本のプロ野球で珍事というか、驚いたのは、昨年の日本一の阪神がオープン戦で苦戦していること。開幕6連敗は金本監督で最下位になった2018年以来という。オープン戦の勝敗は関係ないとはいえ、ファンは少し心配になる。気がかりはレギュラー争いの活気のなさ。昨年は岡田監督の就任1年目で、ほとんどレギュラーも守備位置も確約されていない状況やった。キャンプ、オープン戦とアピール合戦になったのと違い、今年はある程度、レギュラーが固定されてのスタートとなった。
内野は一塁・大山、二塁・中野。遊撃・木浪、三塁・佐藤輝で、外野は近本と森下が座る。捕手も梅野がケガして、坂本で決まり。レギュラーが決まっていないのは、実質、レフトだけ。前川、井上、ノイジーらの争いとなる。この争いがもっと燃え盛ればいいが、突き抜けたものを見せられていない。井上は速いストレートへの課題が残ったままやし、前川は守備が問題。打つだけではレギュラーになれない。今は守備7、打撃3の割合で練習するぐらいに取り組まないといけない。守備は練習すれば必ずうまくなるんやから。
外野争いでは、このコラムでも紹介した育成ルーキーの福島圭音がオープン戦序盤で2軍に落ちた。俊足が武器の身長171センチの22歳。沖縄での巨人戦では、代走で出場して5球目に二盗を仕掛けてセーフになったが、岡田監督は「チャレンジしない。1球目から走れ言うてんのに。代走で行かせているわけやから、そういう意図がわからなアカン」と苦言を呈していた。岡田監督からすると、オープン戦で初球からスタートを切れないようでは、シーズンの大事な場面でスタートが切れるはずがないと思っているのと違うかな。
ただ、スタートを切る怖さはわかる。相手も走ってくるとわかっている状況でアウトになりたくない、いいスタートを切りたいと思うほど、体が動かなくなる。ただ、首脳陣の立場からするとなかなかスタートを切れないより、思い切りよく走ってアウトになる方が評価できる。だから福島にはアウトになることを怖がってほしくない。
僕は1065盗塁の日本記録と合わせて、盗塁死の299も日本記録。誰よりも盗塁で悔しい思いをしたし、失敗して学んできた。走るのを相手が待ち構えている中でも1球目にスタートを切り続けた。その勇気を持ち続けたからこそ、小さい体でレギュラーを張り続けることができた。
福島は2軍でまずは初球から走る癖を身につけてほしい。アウトになってもいいから、試合の中で学んでほしい。変化球のタイミングで走ろうと考えていたら1球目から走れなくなる。走りまくれば、絶対に1軍から声はかかるはず。足が速い小さな選手はどうしても肩入れしてしまう。次にチャンスをもらった時は、岡田監督を驚かせる思い切りのよさを見せてほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。