第96回アカデミー賞の授賞式が現地時間の3月10日、米ロサンゼルスのドルビーシアターで行われ、山崎貴監督作「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を受賞した。監督として視覚効果賞を受賞したのは「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督以来55年ぶり、史上2人目となった。山崎監督は次のようにコメントし、喜びを爆発させた。
〈40年以上前に『スターウォーズ』と『未知との遭遇』を見たショックからキャリアをスタートさせた私にとって、この場所は望む事すら想像しなかった場所でした〉
〈しかし私たちは今ここにいます。この場所から遠く離れたところでVFXを志しているみんな! ハリウッドが君たちにも挑戦権があることを証明してくれたよ!〉
アジア映画がこの賞を受賞するのは史上初で、日本のVFX(視覚効果)が世界で認められたことに日本中が歓喜したが、そこに「15億円の低予算で」という枕詞がつくのがいただけない。
日本の映画製作費が安く抑えられているのは、人件費が安いから。VFXクリエイターの給料を日米比較すると、5倍以上の格差があるという。
日本国内のVFXなど映像クリエイターの給料は、年俸300万円から。それに対し、ハリウッドでは長年続いた労使交渉の結果、駆け出しの新人クリエイターの初任給でも、日本円にして年俸500万円から。ベテランになると年俸1500万円超に昇給する。ロサンゼルス在住の日本人クリエイターが言う。
「いわゆるCGと実写を組み合わせたVFXの技術を有名にしたのは、1997年公開の映画『タイタニック』でした。当時、アメリカで働いていた日本人映像クリエイターと日本国内の映像クリエイターの収入格差は、10倍とも言われました。ハリウッドがあるロサンゼルスは物価が高く、VFX界の大谷翔平、山本由伸を目指して、いきなりアメリカで武者修行というのも現実的ではない。今回の山崎監督の快挙で日本人クリエイターの待遇が改善され、さらにハリウッド挑戦のチャンスが広がるといいのですが」
野球選手のように、クリエイターの頭脳が次々と国外流出しないためにも、アカデミー賞受賞に見合った待遇改善が望まれる。
(那須優子)