本サイトが3月15日に配信した記事では、手足や臓器などが短時間のうちに腐りながら壊死していく、致死率30%~70%の人食いバクテリア感染症(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)の患者数が、日本国内で激増の一途を辿っていることを指摘した。
だが、厚生労働省や国立感染症研究所が今、国内での蔓延を警戒している感染症は、もうひとつ存在する。麻疹ウイルスが引き起こす「はしか」である。
実は昨年来、はしかがパンデミック(世界的大流行)の様相を呈し始めている。WHO(世界保健機関)によれば、2023年における世界の感染者数は、前年の1.8倍にあたる30万人超に達し、中でもヨーロッパ地域(ロシアや中央アジアを含む)の感染者数は5万8114人と、前年(942人)のおよそ60倍にまで急増しているのだ。
そんな中、日本でも今年に入って、はしかへの感染例が相次いで報告されている。目下のところ、報告感染者数は10人台に留まっているが、数が少ないからといって侮ってはならない。というのも、麻疹ウイルスは強烈な感染力を有しているからだ。はしかをはじめとする感染症に詳しい専門家も、次のように警鐘を鳴らしている。
「はしかは飛沫感染や接触感染のみならず、空気感染でもどんどん広がっていきます。感染者が近くにいた場合、不織布マスクをしていても無効です。その感染力は『1人の感染者から12人~18人にうつる』とされており、感染は倍々ゲームどころか十数倍ゲームの勢いで拡大していくのです。日本での感染爆発は、時間の問題と言っていいでしょう」
その場合に危惧されるのが、感染⇒発症による死亡率と後遺症だ。専門家が続ける。
「はしかは10日から12日間の潜伏期間を経て発症します。発熱や咳や発疹などの症状で済めば問題はありませんが、おおむね1000人に1人は、深刻な脳炎や肺炎などの合併症によって命を落とします。また、治癒してから5年以上も経って、およそ10万人に1人が亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という後遺症で死亡するとされています」
SSPEを発症した場合、たとえ一命を取り留めたとしても、日常生活に支障をきたしたり、異常行動が目立つようになったりするケースもあるというから、恐ろしい。
まさに「麻疹ウイルスとはしか、恐るべし」である。(中編につづく)
(石森巌)