「M-1グランプリ2023」王者の令和ロマンは芸人の間で「M-1に最も近い若手」と目され続けていた。吉本興業の養成所(NSC)の卒業公演「NSC大ライブTOKYO2018」での優勝に始まり、「第7回NHK新人お笑い大賞」で優勝、「第44回ABCお笑いグランプリ」で準優勝。芸歴1年目でM-1の「GYAO!ワイルドカード」枠で復活して、準決勝に進出した。これは全て、ボケの髙比良くるまによる、傾向と対策の賜物だった。お笑い関係者が解説する。
「予選を全部見てウケるネタを分析していったら、準決勝に到達できたそうです。その法則を導き出したのは、くるまが幼稚園児の時。通っていたのは都内練馬区屈指の優秀校で、漢字や九九、百人一首、論語選集までを暗記している園児がわんさかいます。くるまはジャポニカ学習帳で小説を『連載』して、それを先生に添削してもらう園児だった。神童と呼ばれていたそうです」
これがのちの人格を形成したのである。学習脳には長けていたが、かわいげはなかった。年長の頃にはクラスメイトが逆上がりができず、みんなから「頑張れ!」と応援してもらえたが、くるまは無視された。
これを機に、自己の客観視を覚えた。両親が離婚し、姓が「斉藤」から「髙比良」に変わったのも、少なからず影響しているかもしれない。
幼稚園時代の原体験で大の国語好きとなり、中学生の時は常に満点。高校生ではネトウヨ(ネット右翼)になり、ツイッターで右翼的・保守的・排外主義な発言を発信した。
慶應義塾大学の文学部へ進学。1浪して特待生で入学したが、授業料を自分で払うスーパー苦学生だった。
「同じ慶應ボーイの相方、松井ケムリはお父さんが大和証券グループ本社副社長兼最高執行責任者の松井敏浩さん。2人が知り合った時、お父さんは副社長になった頃で、ケムリ一家は大学の前にある、東京タワーが見える高級マンション住まいだったそうです。一方のくるまは、夜に西友に行って賞味期限ギリギリの食パンを買って、翌日の昼食にするほど、お金に苦労していたらしい」(前出・お笑い関係者)
M-1優勝時、くるまはメガネをかけていたが、これはフレームだけで、レンズは入っていない。テレビに映った際の反射を避けるためだ。目には黒目が少し大きく見えるコンタクトレンズを装着しており、まゆげにはアートカラーを施している。この容貌への変身も、対策と考察によって導き出した「売れるための法則」だった。
今までのところ、この法則は誤ってはいないが、この先はテレビ露出を控える方向で考えているとか。令和のM-1王者の先行きが危ぶまれる。
(北村ともこ)