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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「開国路線で全日本にハヤブサ、人生らが登場!」

 1996年9月11日、UWFインターナショナルの神宮球場大会に川田利明を派遣したのを機に、全日本プロレスはそれまでの鎖国路線から開国に踏み切り、Uインターとその後継団体のキングダムだけでなく、広く門戸を開放した。

 ビッグニュースは11月16日、後楽園ホールにおける「’96世界最強タッグ決定リーグ戦」開幕戦で、長州力の愛弟子だった馳浩の入団を発表したことだ。

 馳は95年7月の参院選に当選。これを受けて新日本は96年1.4東京ドームで盟友・佐々木健介相手の引退試合を組んだが、馳は試合後に「運命に従って、これからも戦い続けます。新日本プロレスでの10年に感謝します」と意味深なコメント。そして7月26日には、選挙応援への感謝ということで、地元の金沢・石川県産業展示館で健介と組んで長州&永田裕志と対戦して「限界を打ち破るまでプロレスラーとして頑張ります」と宣言していた。

 馳は参院選当選後に新日本との選手契約を終了して、95年8月から1年間のアドバイザリー・スタッフ契約を結んでいたが、契約を更新しなかったのである。

 85年8月に、84年ロサンゼルス五輪レスリング代表の肩書きで、全日本と業務提携するジャパンプロレスに入団した馳は、新弟子時代には馬場の指導も受けていただけに「スタートはここでしたけど、試合はしていなかったので、憧れがありました」と語り、所属選手として翌97年1月2日の後楽園ホールから、国会会期中以外という条件で全日本に出場するようになった。

 最強タッグ中の11月28&29日の札幌2連戦には元新日本の藤原喜明とドン荒川が参戦。28日大会では馬場&渕正信&井上雅央VS藤原&荒川&本田多聞が行われて、馬場と猪木の愛弟子・藤原がヘッドバット合戦、荒川が馬場に対してひょうきん殺法を見せるなど、興味深い攻防が展開された。

 年明け97年1月16日、馬場はかつての弟子・大仁田厚と極秘裏に全日本‒FMWトップ会談。馬場は大仁田が望むFMWとの団体としての交流は保留したものの、全日本参戦を熱望していたハヤブサの受け入れは快諾して、3月2日、キャピトル東急ホテル(現ザ・キャピタルホテル東急)で馬場同席の上で、4月2日の大阪府立体育会館からの出場が発表された。

 5月17日の茨城・石岡大会から格闘探偵団バトラーツの池田大輔が参戦。

 ハヤブサと同じく大物としては7月25日の日本武道館にみちのくプロレスの新崎人生が「全日本は1つの聖地であり、たとえるなら三蔵法師が大切な経文を取りに行った天竺のような場所です」と参戦。ジョニー・スミスとのタッグで秋山準&馳と対戦して拝み渡りや念仏パワーボムなど持ち味を遺憾なく発揮した。

 8月17日の戸田大会、同月22&23日の後楽園2連戦には、元Uインターの中野龍雄が参戦している。

 前年96年9月のUインターに続く派遣第2弾は、9月28日のFMWの川崎球場。小橋健太(現・建太)とマウナケア・モスマン(現・太陽ケア)がコンビを結成して、ハヤブサ&人生と対戦。小橋が豪腕ラリアットで勝利した。

 こうして全日本の開国路線は予想以上の広がりを見せたが、水面下で密かに交渉が進められていたのが、天龍源一郎の復帰である。

 96年10月、全日本の開国路線が進む中で、天龍番記者だった筆者は天龍から「一度、全日本に上がって恩返しをしたいっていうのが今の正直な気持ちだよ。大きくなった三沢たちとも純粋にレスラーとして戦ってみたいしね」と打ち明けられた。これを馬場にストレートにぶつけてみたのだ。

 馬場は開国の際に「別に鎖国をしていたわけではないが、裏切った者を上げることはない」と語っていただけに、90年4月に電撃退団して新団体SWSの設立に加わった、天龍が全日本に上がることはないだろうと思われていた時期だ。

 筆者の話を聞いた馬場は「別に許すも許さんもないよ。もうSWSとの裁判も終わっとるし、天龍も自分の会社を持って苦労してきたんだろ? ただな、天龍が出ていったあとに頑張ってくれた選手たちの気持ちを考えると〝はい。そうですか〟というわけにいかんのや。それに上がることになったとしたら大義名分が必要になる。俺は猪木のように誰でも平気で使うと思われたくないし、天龍だって俺に頭を下げたくないだろう。お互いの面子が保てるということが必要なんだよ」と、天龍にも配慮する言葉を口にした。

 その後、WARの武井正智社長の「お会いしたい」というメッセージを伝えると「だったら、1月4日の東スポのプロレス大賞授賞式の後でいいだろう」との答え。かくして97年1月4日、銀座東急ホテルのコーヒーラウンジで馬場‒武井会談が実現した。馬場がオープンな場で武井に会ったのは、これが報道された時に全日本の選手・関係者がどういう反応をするのか確かめたかったからだ。その結果は─。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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