4月21日、GⅢ・西武園記念2日目。4月30日からいわき平競輪場で行われる日本選手権競輪(競輪ダービー)を前に、選手のコンディションをチェックしようと出かけたのは、キーマンのひとりで有力候補の脇本雄太を見ておきたいと思ったことが一因だった。ところが、腰痛のため欠場してしまった。
脇本は2021年東京五輪の自転車競技に出場した日本代表選手だが、五輪終了後に不調を訴え、4カ月も戦線を離脱した。ギックリ腰かと思った痛みは単なる腰痛ではなかった。トレーニングなどが原因で、股関節の腸骨という体の中心部にある骨の疲労骨折であることがわかり、歩くこともままならない状態だった。同じいわき平で行われた2022年のダービー直前にインタビューした際は「注射を痛いところに手当たり次第、かなりの本数を打ちました」と語っていた。
しかし脇本はそのダービーで優勝し、不死鳥のように蘇った。その年のKEIRINグランプリも制覇して、競輪界の頂点に立った。
ところが今年に入って1月のGⅢいわき平記念で落車するなど、コンディションを懸念する声が出る。そんな中で走った西武園記念の初日、脇本にいつもにスピードは感じられず、マクリ不発の9着。そして翌日は欠場。はたしてダービーまでに、どこまで戻してくるだろうか。
8Rは3連単が1番人気の320円、続く9Rからも同じような傾向かと思ったら、いきなり逆風が吹き始めた。突然、荒れ出したのだ。
9Rは1、2、3着すべてがスジ違い車券で、3連単7万810円。10Rも同様で、同5万7560円、11Rは大本命の深谷知広が先行する展開になり、最後に失速して3着に。3連単は11万1690円の大穴だった。一体、どうなっているのか。ありえない流れが続いた。
こういう時は、最後は堅く収まる。それが「競輪あるある」だ。
3連単の人気は①眞杉匠に続く⑤平原康多―⑨中田健太の関東ラインでガッチガチ。平原が差す⑤①⑨はなんと、3連単200円台だ。1点勝負でなければ儲からない「不幸車券」。だが、1着2着は①⑤か⑤①で決まる確率が限りなく高く、9Rから11Rのような結果にはならない。そこで①⑤、⑤①から3着は⑨以外、②③④⑥⑦。それでも最も安い配当の⑤①⑦が、2710円もつく。
だが、しかし! 結果は⑤①⑨230円だった…。ドボン、5連敗である。
思い起こせば最終レースまで散々やられ、最後に穴を狙ったら、本命で決まったという経験を何度もしている。こういう日はどう抗ってもダメ。仕方ない。どこにも寄り道せずに帰ったのだった。
リベンジは4月23日最終日の12R決勝で。シャリロトで車券を購入した。
①平原康多41埼玉87期
②深谷知広34静岡96期
③眞杉 匠25栃木113期
④森田優弥25埼玉113期
⑤稲川 翔39大阪90期
⑥一戸康広36埼玉101期
⑦武藤龍生33埼玉98期
⑧黒沢征治32埼玉113期
⑨坂井 洋29栃木115期
決勝には地元・埼玉の選手が5人乗ってきた。黒沢―森田―平原―武藤―一戸で並ぶ。深谷には即席で稲川、栃木両者は眞杉―坂井に。
5人、5車のラインで思い出す言葉がある。時々ご一緒する俳優で作家の中村敦夫さんの言葉だ。ライン5車のレースの時に、こうジョークを飛ばした。
「5車で並んだら、ラインでそのまま決まるかというと、そうじゃない。ゴシャゴシャ(ゴチャゴチャ)といって、案外まとまらないものなんだ」
このレースもそうなるのではないか。狙いは埼玉以外の選手だ。1着2着②③⑤⑨から、3着に埼玉勢を加えて幅広く狙った。
レースは深谷―稲川が前攻め、栃木勢、埼玉5車で並び、埼玉勢の見せ場は黒沢が4車を引き連れ、ハナに立ったところまで。最終バックからの深谷、眞杉のマクリをなぜかあっさり許してしまい、眞杉、深谷、平原で決着する。3連単③②①1万8910円を取った。
2日前に5連敗したマイナスを、一気に取り戻すことができた。これで気持ちよくダービーに出かけられる。
(峯田淳/コラムニスト)