俳優で作家の中村敦夫さんとご一緒した弥彦競輪のG1寛仁親王牌、10月21日と22日。21日は最終日の決勝を走る9人を決める準決勝3レースが行われた。
大ヒットした時代劇「木枯し紋次郎」で颯爽と紋次郎を演じた中村さんのことは、紋次郎先生と勝手に呼ばせてもらっているが、お会いすると必ず話題になるのが、大穴の法則である。大穴車券をゲットする、紋次郎先生の必殺技。迷ったり穴が出そうなレースでは、競走得点が低い選手が走る④枠、⑥枠、⑧枠の「ヨーロッパ」の選手のどれかを頭に、2着は全、3着は本命サイドの強い選手というものだ。
紋次郎先生と悔しがったのは、12Rだった。若くて強い犬伏湧也が◎、マークする実力者の松浦悠士が〇だった。この本命と対抗で堅い、と思われた。だが穴党はこういう時にこそ、闘志がメラメラと湧く。④⑥⑧からと考えることができれば大成功だったが、そううまくコトが運ばないのが競輪なのだ。
結果は⑧小松崎大地が一気のマクリを決め、2着はマークした⑦渡部幸訓、3着に①犬伏。⑧から2着全で買い、3着は◎の①犬伏で大正解だった。⑧⑦①の3連単は23万2850円。「このレースだったね」と言う紋次郎先生と顔を見合わせ、苦笑いするしかなかった。
この日は雨が降ったりやんだりで、レースが終わった午後5時前には、あたりが真っ暗だった。競輪場の隣りの弥彦神社を紋次郎先生とお参りしてから、車で燕三条のホテルに向かう。食事をして、翌日に備えることになった。
決勝戦が行われる10月22日は、夕刊紙のイワオ君が合流するので燕三条駅でピックアップし、競輪場に向かった。紋次郎先生は長身痩躯、イワオ君はデカイ。運転するのはチビのデコデコボコ。珍道中にならなければいいが。
4R終了後にイワオ君と正面スタンドへ。主催者の弥彦村産業部公営競技事務所で挨拶し、ついでにランチとなった。4コーナー裏手にあるセダーハウスに飲食店が入っている。そこの「ラーメン輪」で岩のりラーメン700円を。聞き覚えのある声がしたので振り向くと、リリコ嬢だった。稲垣裕之、鈴木竜士のファンで、日本中の競輪場に出かける奇特な女性である。10月21日、3日目3Rでは稲垣が1着になった。「取れた?」と聞いたら「×」だった。残念。頑張れ、リリコ!
紋次郎先生のいるスタンドに戻ると、かつて世界選手権でスプリントV10の偉業を達成したレジェンドの中野浩一さんや関係者が、挨拶に見えていたようだ。
紋次郎先生が感慨深げに語る。
「これまで役者、作家、キャスター、議員といろんなことをやってきたけど、何十年もブレずに続けてきたのが競輪。やっぱり継続すること、ブレないことが大切だね。競輪は楽しい」
含蓄ある言葉に、我々も頷く。ブレずに35年もギャンブルを続けてきた。まだまだ続けるしかないのだろう。
ここ数年、たっぷり車券修業を積んだイワオ君は好調な時期もあったが、このところ逆戻りし、裏を買えばハズレ、勝っていなかった選手が3着に入ったりのチグハグが続いた。的中はあるものの、収支マイナスとちょい浮きを繰り返している。いつものことだ。
「まだまだ修業が足りないね」と言うと、「おっしゃる通り」と頭を掻く。とはいうものの、こちらもパッとしない。
3Rは成績上位の力勝負車券ボックスが的中したが、3連単は1430円。それからずっとハズれて10R、3連単8500円をゲットした。12R決勝の車券代がかろうじてできた。
さて、決勝。手広く①佐藤慎太郎、②犬伏湧也、③古性優作を頭に、フォーメーション63点+αでいく。結果は1着③古性、2着①佐藤、3着⑤渡部幸訓。だが⑨和田健太郎が落車し、①と4着の⑦が審議に。①が失格なら③⑤⑦で3連単3万9600円、⑦も失格なら③⑤で3着④諸橋愛、3連単③⑤④はなんと6万7890円だ。これらを300円ずつ買っていたので、③⑤⑦なら12万円弱、③⑤④なら20万円超になる。
審議の結果がアナウンスされた。①も⑦もセーフで3連単は③①⑤、配当は7550円だった。2万円ちょっとの払い戻しで、弥彦競輪場をあとにしたのだった。
燕三条駅では落車した和田、犬伏らを見かけた。和田は大ケガではなかったようで、何よりだった。
(峯田淳/コラムニスト)