第10節を終えたJリーグは大混戦。そんな中で首位に立っているのが、セレッソ大阪である。
今年でクラブ創設30周年を迎えるC大阪は、1月の新体制発表会において小菊昭雄監督が「本気でリーグ優勝を獲りに行く。30周年にふさわしい1年にしたい」と優勝宣言。メモリアルイヤーでのリーグ初優勝を目指してスタートを切った。
一昨シーズンに5位まで躍進し、期待された昨シーズンは9月に4位にまで浮上したものの、終盤に失速して9位に終わった。
今シーズンは4-3-3システムを確立させるため、争奪戦の末にコンサドーレ札幌からアンカーに田中駿汰を獲得し、最終ラインの前の壁に。
同じく札幌から、サイドアタッカーの仕掛け人ともいえる、ルーカス・フェルナンデスも獲得。さらに左サイドバックには、フロンターレ川崎のベテラン登里享平と即戦力の選手を獲得した。
昨季よりもリスクを背負ってでも点を取りにいく攻撃的なサッカーで、開幕を迎えた。2引き分けのスタートとなったものの、第8節の川崎フロンターレ戦に1-0で勝利すると、今季初の首位に立つ。しかも開幕から8試合負けなし、全ての試合で先制するという安定感を見せていた。
第9節の名古屋グランパス戦に1-2で今季初黒星を喫し、わずか1節で首位陥落。それでも第10節の横浜F・マリノス戦を2-2で引き分けて勝ち点1をもぎ取ると、再び首位に返り咲いた。
この試合こそが、今季のC大阪の強さを物語っていた。昨季の9月、4位と浮上したが、その後は1勝1分6敗と失速。その6敗全てで先制され、逆転どころか同点にもできなかった。「先制されたら負ける」と言われた。
ところがこの試合では、マリノスに二度リードされながらも、二度とも追いつくという執念で、引き分けに持ち込んでいる。その粘りが昨季との大きな違いであり、自力がついてきた証拠。それがチームの安定感に繋がっている。
基本システムは4-3-3だが、前線からハイプレスをかける時は4-4-2になり、中盤での勝負になると敢えて4-2-3-1と中盤を5人にするなど、相手の出方によって臨機応変に変えている。チームのエース・ストライカーであるレオ・セアラが、5試合連続ゴールと好調なのも大きい。
5月が勝負どころになってくる。11日に昨季の王者ヴィッセル神戸戦。15日には序盤からサプライズともいえる快進撃を続けている、町田ゼルビア戦。26日にはC大阪と同じように安定した戦いを見せている、3位のサンフレッチェ広島戦が控えている。このヤマ場をどう乗り切るか。
腰を痛めていた香川真司が完全復活し、4月には元日本代表の清武弘嗣が、ルヴァンカップのグルージャ盛岡戦で故障から復帰した。ゴールデンウィーク明けには、パリ五輪アジア最終予選に参加している西尾隆矢も帰ってくる。
C大阪にはプラスの材料しかない。5月の上位対決の結果次第では、C大阪が前半の主役に躍り出るが…。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。