元相棒の余罪が次から次へと明らかになろうがノープロブレム! 異次元のスーパースターは豪打を轟かせ、遂にはMLB日本選手通算本塁打記録まで更新してしまった。それでも往年のファンは、かつてのホームラン王たちを贔屓目で見ることも少なくないだろう。だったら、時空を超えて白黒つけようではないか。
一刀流でポテンシャルが限界突破を迎えたのか。今季、DHを主戦場とするドジャース・大谷翔平(29)の痛烈な快音が鳴りやまない。大リーグ評論家の友成那智氏が解説する。
「大谷の前後にMVP選手、中軸にもスミス(29)、ヘルナンデス(31)ら並みいる強打者が続く打線のおかげで、相手投手に勝負してもらえている印象です。特に1番ベッツ(31)が大谷と首位打者争いをするぐらい当たっていて、ランナーを1塁に置いた時の大谷の打率は4割1分7厘(成績は5月10日時点。以下同)、出塁率5割と相乗効果を得られている。その証拠に、第1打席に打率4割4分1厘、4本塁打を残しています」
開幕から自己ワーストとなる8試合0ホーマーだったのも何のその。スタンドにぶち込まれるアーチの打球速度はMAX191キロを計測。ドジャースが「スタットキャスト」なるデータ解析ツールを導入してからの最速レコードまで更新したのだ。昨季まで巨人で打撃コーチを務めた、野球評論家のデーブこと大久保博元氏も驚きの声を上げる。
「日本人では考えられない数字です。6年連続ホーマーを記録している、岡本和真(27)でも180キロ台でしたからね。大谷はWBCで岡本に『バッティングで技術うんぬんを理由にするのは言い訳』と前置きして『とにかくパワーをつけろ』とアドバイスしていたようですが、ここ数年の大谷のボディはMLBの大男たちからもうらやましがられるレベルにまで到達していますよ」
そんな異次元のフィジカルを有効活用するべく、今季から練習に導入したのがクリケット用のバットだ。
「野球のバットよりも1.5〜2倍の重量で球の下から打つことになるので、大谷のようにアッパースイングの選手には適した練習法かもしれません。左打者の場合は右ヒジを真っすぐ引くような腕の使い方になるので、手首が早く返らないよう矯正するために使用したのは合点がいく。ブレーキングボールやオフスピードボールを捉える打球が目に見えて増えました」(友成氏)
さらには、昨季の弱点を克服するために、打撃フォームにも改良が加えられている。
「相手が左投手の場面で、オープンスタンスに構えるようになりました。昨季の対左打率は2割5分を切り、インハイの速球とアウトコースのスライダーのコンビネーションで手玉に取られる打席が多かった。それが、新フォームで対左打率が3割8厘にまで改善されました。5月6日の対ブレーブス戦で打った2ホーマーは左投手相手。年のサイ・ヤング賞候補だったフリード(30)のカーブをスタンドまで運んだシーンにはシビれましたね」(友成氏)
早くも、前人未踏のタイトル総なめまで視界に入ってきたようだ。
「例年、8〜9月にバテて失速する傾向が見られたのも、投手との併用による蓄積疲労が原因です。打者専任の今季はシーズン終盤の後伸びにも期待できるでしょう。ナ・リーグには強打者のライバルが揃っていますが、50本塁打、130打点をクリアできれば三冠王も見えてくる。今のペースなら実現可能な数字だと思います」(友成氏)
まさに「人間万事塞翁が馬」よろしく、MLBで規格外の大打者に進化した和製大砲。その卓越した能力はNPBのレジェンドたちと比較しても、やはりズバ抜けたものだった。