今年2月に行われたラジオのイベント「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」は、5万3000人ものリスナーが参加し、大成功を収めた。さらに先日、ニホンモニターが発表した「令和タレント番組出演本数ランキング」では、春日俊彰が2382本で3位、若林正恭は2273本で5位にそれぞれランクイン。オードリーはもはや、不動の地位を確立したといえるお笑いコンビだ。
とりわけ若林は、先のランキングこそ相方よりも下位ではあるが、単発ゲスト出演が多い春日と違い、「しくじり先生 俺みたいになるな!!」「激レアさんを連れてきた」(ともにテレビ朝日系)や、残念ながら放送は終了してしまったが、水卜麻美アナとの掛け合いが楽しかった「午前0時の森」など、ピンで出演するレギュラー番組を持つのが強みである。
昨年は髙橋海人(King&Prince)が若林を、森本慎太郎(SixTONES)が山里亮太(南海キャンディーズ)を演じたドラマ「だが、情熱はある」(日本テレビ系)が放送され、とにかく絶好調といった感じの若林。私生活でも2019年に一般女性と結婚し、2022年には女児が誕生と、もはや「人見知り」とか言われても「ビジネス人見知り」と揶揄したくもなるほど充実した感がある。
そんな若林が先日、少々気になる発言をしていた。それは「あちこちオードリー」(テレビ東京系)でのこと。「全然、説明伝わんないんすけど」と前置きして、次のように話し始めたのだ。
「俺、Uber Eatsを今、やってるんですよ」
ゲストのおいでやす小田が目を丸くして聞き返すと、
「なんか趣味持たなきゃ、ってなるじゃないですか。自転車を趣味にしようと思ったんですよ。でも東京走ってても、行きたい場所も見たい景色も何にもないんですよ。もう、なんなら亡霊のように(自転車を漕いでいた)。もう仕事みたいな、義務みたいな。でもUber Eatsの配達員だけ、オーラが違うんですよ。漕いでる時の。なんかね、どこかに向かう必要がある人のオーラが出てるんですよ」
これに「あるよ、そりゃ。届けなアカンねんから」と呆れたように返す小田。
「俺は『羨ましいな。目的がある人』って思ったんですよ」
そう畳みかけた若林は、面接が不要ということでUber Eatsにすぐに登録したと明かす。
「配達(のオーダーが)来るじゃないですか。で、受け取るじゃないですか。(オーダー受けたからには)絶対に行かなきゃいけないじゃないですか。絶対に行かなきゃいけない場所があるってね、灰色だった街がカラフルになるんですよ」
なんとも満足気な若林なのだった。
このエピソード、いい話にも聞こえなくもないが、「唯一の収入源がUber Eatsの稼ぎ」という必死のパッチで生きるためにやっている人たちは、どう感じるだろうか。
先日、関東地方で記録的な大雨が降った際のニュースで、そんな悪天候の中で商品を届けるUber Eats配達員の姿が流れていたのだが、その彼が言うには「雨の日は配達料にプラスしてボーナスがもらえる」。物価高が続くこのご時世に、わずか数百円のボーナスのために、雨に濡れながら必死に自転車を漕ぐ姿に、目頭が熱くなった。
あまつさえ、若林が「師匠」と慕うピン芸人のTAIGAに至っては、芸人としての稼ぎだけでは家族を養えないがゆえに、Uber Eatsの仕事で生計を立てていることがよく知られているというのに…。
「実際にやってみて、彼らの苦労がよくわかった」と言うのならまだしも、本当にただの趣味だけでUber Eats配達員をやっているのだとすれば、それは全てが充足した者の、ただの戯れでしかない。おごれる若林は久しからず、だ。
(堀江南)