パリ五輪でメダルを狙うU-23日本代表の周辺が騒がしくなってきた。
8大会連続の五輪出場を決めた後、最終登録メンバー18名には誰が入るのかと、様々な意見が出ている。特に3人まで招集できる24歳以上のオーバーエイジ(OA)枠については、A代表の主力であるセンターバックの板倉滉、町田浩樹、MFでは遠藤航、田中碧ら海外組の名前が挙がっている。
大岩剛監督のサッカーは攻守にアグレッシブで、攻守の切り替えの早さが持ち味。ボールを奪ったら、まずゴールを目指す。ボールを奪われたらすぐに切り替えて、奪い返す。その意識を全員が共有して、誰もサボらない。
と同時に、世界で戦うには守備が大事だとして、後ろの選手を中心に招集すると言われている。ただ、海外組の招集は一筋縄ではいかない。
ご存知の通り、五輪はFIFA主催の大会ではないため、強制力がない。だから所属クラブと交渉するしかない。前回の東京五輪は開催国ということもあり、予選免除で本大会出場が決まっていたため、早い段階から所属クラブと交渉できた。「開催国だから」という説得の理由もあった。でも、今回は簡単にはいかない。
なぜなら、ヨーロッパの主要リーグの来シーズンの開幕は、ほとんどが8月17日。パリ五輪サッカー競技の日程は7月25日から8月10日までだ。日本が目指しているメダル獲得を達成するには、8月9日の3位決定戦、または10日の決勝に出場することになる。しかもそれまでは、中2日の連戦が続く。連戦による疲労を考えれば、リーグ開幕戦に出場するのは難しい。そんな厳しい日程のパリ五輪の招集に、所属クラブが簡単に応じるとは思えない。
OA枠に名前が挙がっている板倉、町田といった選手は今夏、新天地への移籍の噂がある。移籍が決まれば、早くチームに合流してアピールする必要がある。パリ五輪に出場していてはポジションの確保どころか、ベンチ入りさえ難しくなる。
OA枠だけではない。アジア最終予選に招集できなかった、久保建英ら23歳以下の海外組にも言えることだ。パリ五輪出場が決まり、大岩ジャパン最強メンバーを招集したいところだが、簡単にはいかない。
パリ五輪予備登録50人の締め切りは5月末。そのメンバーに、海外組が何人選ばれるのか。サッカー協会の腕の見せどころだが…。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。