サッカーの欧州リーグは次々と最終節を迎えているが、海外で活躍する日本人選手の今シーズンを振り返る、忖度なしのレーティング企画(5点満点)をスタートさせてみたい。題して「海外サッカー日本人プレイヤー/リアル通信簿2023-2024」。
第1回は、イタリアの強豪ラツィオに所属する鎌田大地だ。
5月19日に行われた第37節のインテル・ミラノとの一戦で、前半32分にペナルティエリア付近でパスを受けると、迷わずに左足を振りぬく鎌田。低弾道のシュートにGKヤン・ゾマーはボールに触れることができず、セリエA優勝チームから先制点を奪う強烈な一撃で存在感を放った。
しかし鎌田は今季、開幕前に所属チームすら見つからない、まさかのピンチを迎えていた。海外に詳しいサッカーライターが振り返る。
「ドイツのフランクフルトから移籍先を探していた鎌田は、昨年6月のエルサルバドル代表との国際親善試合に向けた前日練習後に、囲み取材に応じました。そこで移籍先に言及し、『チャンピオンズリーグ以上で、4大リーグ以上でやれるのは間違いない』と、オファーが届いているのを認めていました」
当時、移籍先の最有力と見られていたのは、かつて日本代表で活躍した本田圭佑も所属したイタリアの名門ACミラン。
チーム名こそ出さなかったが、自信満々な鎌田の発言に報道陣も移籍は秒読み段階だと思われていた…。
「獲得を進めていたミランで、テクニカルディレクターを務めていたパオロ・マルディーニ氏が電撃解任されました。急転直下、そこから風向きは変わり、フロントが新体制になると、移籍交渉は〝凍結〟され、進展がないまま破談になっています」(前出・サッカーライター)
移籍金のレベル的にも鎌田は市場の人気銘柄だったのにもかかわらず、この時点で、他のチームのほとんどは新シーズンの陣容が落ち着いていた。サッカーライターが続ける。
「新たな移籍先に浮上したクラブも『鎌田発言』に当てはまらないクラブばかり。かなり焦りがあったと聞きました。そんな中、セリエAの開幕目前に、ようやくラツィオと1年契約での移籍が決まったのです」
しかし、新シーズンが始まっても、鎌田の苦悩は続く。マウリツィオ・サッリ監督のもと、開幕戦からスタメンの座を獲得するも、チームは第4節まで1勝3敗とスタートダッシュに失敗。批判の矛先は鎌田に向かい、戦犯扱いされるとスタメンからも外されてしまう。
「移籍のゴタゴタもあって、コンディション不足とモチベーションの低下は明らか。さらに人見知りの性格がモロに発動し、選手たちとコミュニケーションをうまく取れず、チーム内で孤立する場面が目立ちました」(前出・サッカーライター)
弱り目にたたり目とばかりに、今年1月に開催されたAFCアジアカップカタール2023のメンバーから落選。
クラブでの出場機会も激減し、冬の移籍市場で「即放出」と言われるほど、窮地に陥っていた。だが、3月に成績不振でサッリ監督が辞任すると、ガラリと環境が変わる。
「イゴール・トゥドール新監督は積極的に先発起用。すっかり『お気に入り』になると、水を得た魚のようにピッチを駆け回り、チームメイトにも指示を出すようになった。チームに慣れ、人見知りからも解放されてまるで別人になった鎌田に、イタリアのメディアは『覚醒した』と驚きを持って伝えました。現在は、クラブ側も残留交渉に向けて動き出しています」(前出・サッカーライター)
さて通信簿だが、最終節(5月26日)の前までで28試合に出場して、2得点。今シーズンを通しての活躍という意味では、少々辛口だが「2」が妥当だろう。しかし、第30節のユベントス戦以降、ほぼフルタイムに近い出場時間でチームの好成績に貢献(リーグ戦8試合5勝1敗2分)。「終わりよければすべてよし」ということか。来季への期待が膨らんだことで、プラス1、今シーズンの鎌田の採点簿は「3」としたい。
この上り調子のまま、W杯アジア予選を戦う日本代表でもぜひ大暴れを!
(風吹啓太)