「問題のシーン」は1回表にいきなりやってきた。ベルーナドームでの、5月21日の西武VSロッテ戦、一死満塁でロッテの中村奨吾が打席に入った時のことである。
2塁ランナーのソトが、顔の横で右手を振るような仕草を見せたのだ。その直後、中村は西武・今井達也の140キロのスライダーを見事に捉え、レフトへ2点タイムリー2塁打を放った。
このシーンを見た野球ファンからは続々と「ソトの動きはサイン盗みではないか」との声が上がる。その一方で「虫を払っているだけ」という見方もあり、論争に発展した。スポーツライターが分析する。
「ソトは右手を軽く1回振るように上げており、虫を払うような仕草とは明らかに異なります。直後にタイムリー2塁打ですから、サイン盗み疑惑が浮上するのもわからなくはない。西武から抗議があれば、間違いなく審判から注意を受けるシーンだったといえるでしょうね」
真実がうやむやのまま、SNSでは「サイン盗み」がトレンド入りしたのだが、こうした「疑惑の動き」が大問題になったことは、近年もあった。
それは2021年7月6日のヤクルトVS阪神。2回二死一、二塁で、二塁走者の近本光司の左手の動きを見たヤクルト・村上宗隆が、審判にアピール。両軍ベンチが言い争いに発展する騒動が起きた。
試合後、セ・リーグの杵渕和秀統括が「裁定」を下す。
「近本選手の左手の動作は、球審の名幸(一明)も気になったとのこと。ただ、サイン盗みまであったとは思っていない。本件に対しては、これ以上は対応しない」
ソトの右手がまぎらわしかったのは事実。遺恨試合にならなかっただけ、まだよかったような気もするが…。
(ケン高田)