5月22日の通勤時間帯、演歌歌手の細川たかしがトレンド1位でネットを席捲した。理由は、この日先行配信される新曲「男船」のジャケット写真が公開されたことにある。なにしろ、これが「あまりに強烈すぎる」と、SNS世代の若者たちが食いついたのだ。
ジャケットは、演歌とはかけ離れたイメージの髑髏ジャージを着た細川が20体、「男船」のタイトルにちなんだ荒波の中から、まるでこちらへ上陸してくるような構図だ。これが、近年のバシッと決まった二次元ルックスも相まって、まるでSFパニック映画のポスターのようなインパクトを与えている。芸能ライターが解説する。
「バズった最大の理由は髑髏ジャケットです。今年1月にコンサート終了後の細川がこのジャージ姿で会場を後にする姿が雑誌に掲載され、かなり話題となりました。スマホを持たない本人はそうした騒動を知らなかったようですが、今回はスタッフがこの髑髏ジャケットを新曲ジャケに使うことを提案し、実現したようですね。狙い通りの大バズりですが、髑髏ジャージを着ている細川をただ写しているだけでなく、同じ画像を20体も所せましと散りばめたことで、『夢に出てきそう』と、一度見たら忘れられないインパクトを出せたことが勝因でしょう」
若い世代は今回のジャケットを「斬新」と絶賛中とのことだが、エンタメの世界には往々にして「元ネタ」があると、前出の芸能ライターは語るのだ。
「20体の本人を散りばめたのが誰のアイデアかわかりませんが、その元ネタは『キング・オブ・ロックンロール』こと、エルヴィス・プレスリーです。1959年発売の『エルヴィスのゴールデンレコード第2集』で、エルヴィスは金ピカスーツ姿の自分自身を14体も散りばめました。彼のアルバムの中でも有名なアルバムジャケットで、アーティストの顔のアップや突っ立っているだけのポーズが当たり前だった時代でしたから、『こんなことはエルヴィスしかできない』と、当時のファンは熱狂したようですね。その後、この自己主張の強いジャケットを唯一マネることができたのが、80年代のやはりモテ男でスーパースター、ロッド・スチュワートでした。彼の『ボディ・ウィッシーズ』という83年のアルバムには、深紅のジャケット姿の12体のロッドが写っています。本人はエルヴィスを真似たと公言していましたが、『ロッドならやりそう』とその物まねジャケットも歓迎されて、本国のイギリスでは大ヒットしました」
しかし、今回のジャケット上の細川の数は20体と、ロッドも本家エルヴィスも超えている。しかも、バックにはザバーンと音が聞こえそうなほどの荒波も施して、現代版へと見事にバージョンアップだ。
もしも、ここまで自己顕示欲の強いジャケット写真が、自他とも認めるカリスマ性を兼ね備えたソロシンガーにしか不可能なのだとしたら…。今回の大バズりは、日本中が細川たかしを「スーパースター」と認めた証と言えそうだ。
(塚田ちひろ)