新潟に出かけるといえば、これまではほとんどが弥彦競輪場だった。
上越新幹線の燕三条駅で下車し、交通手段は単線の電車か、車を借りて田舎の一本道をズンズン進む。すると見渡す限りの田んぼの奥に弥彦神社とお膝元の弥彦温泉があり、神社横、杉並木の中に弥彦競輪場が鎮座する。神社にお参りしてから、カンカンという打鐘の音を聞く。孤独のギャンブルの聖地のような場所だ。
今回は燕三条駅を通過して、ひとつ先の新潟駅で新幹線を降りた。目的地は新潟競馬場。なんだか浮気しているようで、弥彦競輪には申し訳ない。
そんな後ろめたい気持ちで新幹線に乗っていたら、熊谷駅で止まってしまった。熊谷駅と本庄早稲田駅の間で架線に農業用のビニールが絡まったというのだ。
立往生すること、実に1時間58分。12時前に新潟駅に着く予定だったのが、改札を出た時にはもう14時近かった。払い戻しがあるか駅員に尋ねると「2時間からなんです」と言って、ペコリと頭を下げる。ハハ~ン。ギリギリ2時間を切るように走らせ、間に合わせたということか。釈然としないが、急げ。新潟競馬場、時間がない。
駅からはカーシェアを利用。ナビによれば、競馬場までは約16キロ、20分ほどの道のりだ。ところが途中、路線変更が必要な道路工事があり、カーナビも不案内。「200メートルで左の側道に入る」というようなアナウンスが何度も流れたが、側道を通り過ぎてのアナウンスでは、時すでに遅し。何度も道を間違え、最後はどこを走っているのかわからないような状態だった。予定の倍以上の50分くらいかかり、到着したのはなんと15時前である。
6Rか7Rには競馬場入りする予定だったが、お目当ての9Rにも間に合わなかった。9Rは新潟名物の直線1000メートルのレースだ。その9Rどころか、10Rの発売締め切りの直前である。なんてこった! 新潟、孤独のギャンブルは誤算に続く大誤算の連続。着いたら「もうすぐ終了」のゴングが鳴る時間なのだ。
10Rの結果を確認すると、⑩ノーブルクライが勝っている。タラレバになるが、この日、最も間違いのないのはこの馬と思っていた。騎手は丹内祐次。「関東所属ジョッキー、特別リーディング」というデータでは3位につけている。あとで確認したら3番人気だったが、頭から買ったらそこそこ配当も期待できた…。
1着ノーブルクライ、2着は1番人気、3着は6番人気で、3連単は1万9260円の好配当になった。この馬券は想定内だったが、何から何まで裏目、裏目の展開になっている。
朝から何も食べていないので、1階で見つけた売店で「長岡ポーク丼」650円(写真)をかき込む。北海道名物の豚丼より甘めだ。豚肉の量が多いので、ボリューム重視の人にはおススメの一品だろう。
11Rも締め切りまで時間がない。大日岳特別、4歳以上2勝クラス、芝1200メートル、16頭立て。
このレースは絞り切れない。持ち時計を見ると、抜けた馬がいないのだ。ここは10Rからの流れで人気上位場が絡む展開、という想定で狙ってみる。
1番人気の1枠②コスモアディラートには丹内が騎乗。10Rに続く2連勝はないかと思いながらも、このレースの丹内は外せない。1枠には5番人気の①ステイトダイアデムが同居している。それから2番人気の7枠⑬ガリレイ、3番人気の5枠⑨ハピネスアゲイン、4番人気の4枠⑧サトノグレイト。この①④⑤⑦の枠連BOXに各2000円、合計1万2000円をブチ込む。11Rが終われば、残るは12Rだけ。負けが込んでいるわけではないので、一発逆転よりは当てにいく戦法だ。
結果は3連単⑧⑪⑫で99万5850円、いきなりの特大穴馬券だ。4枠と6枠両馬の1、2、3着、枠連④⑥は5530円ついた。⑧は4番人気、⑪は16番人気、⑫が6番人気の組み合わせ。お話にならない。グウの音も出ない。
この日の新潟競馬は100万円馬券と90万円馬券1回、60万円馬券2回、10万円馬券1回と荒れた。宝クジを買うようなレースが多かったのだが、翌19日も90万円、50万円、20万円、30万円、10万円の大穴馬券が合計9回、3連単の4桁配当ゼロ、5桁3回と、もっと荒れた。素人が手を出すことができるような競馬ではない。マイッた。
だが、最終勝負は下駄を履くまでわからない。
(峯田淳/コラムニスト)