サッカーJ1リーグの北海道コンサドーレ札幌が5月29日、公式サイトでサポーターに向けて声明を発表した。そこには、アツい思いが綴られていた。
「今シーズンの最後までミシャ監督と戦う決意をしました」
「経営状況もありますが、リーグ戦でのJ1残留を何よりも第一優先とし、ルヴァンカップや天皇杯なども含めて、今シーズンをクラブとミシャ監督との集大成として考えています」
まだ、前半戦を折り返していない時点で緊急声明を出さざるを得なかったのは、17年からJ1に定着してきた中で、最大のピンチを迎えていたからである。スポーツ紙記者が説明する。
「今季は開幕戦でアビスパ福岡と引き分けると、第6節まで泥沼の5連敗。そこから調子を上げて、一時は立て直せると思われましたが、5月になって再び黒星が先行しました。5月25日の第16節で鹿島アントラーズに惨敗しましたが、この時点で降格圏の19位に沈んでいます。いよいよ名物監督で知られる『ミシャ』こと、ミハイロ・ペトロビッチ監督の途中解任がサポーターの間でささやかれたことで、クラブは先んじて続投の意思を示す形になりました」
こうなったら、サポーターは一致団結して乗り越えるしかないところだが、実際は「解任できなかった理由がある」と、サッカーライターは声を潜めて明かす。
「札幌のサッカーは『ミシャ式』と言われる独特の可変式システムを用い、攻撃時と守備時でフォーメーションが異なります。流動的にポジションが変わるため、対戦相手は混乱に陥りドツボにはまるという革命的なシステムで、これまで好成績をもたらしてきました。しかし、さすがに徹底的に研究されて、今では丸裸状態。本来であれば、新監督を迎えて新風を吹き込んでほしいところですが、コンサドーレの選手は『ミシャ式』が骨の髄まで染み込んでいるため、シーズン途中に切り替えるのは難しいというのが実情です。むしろ、解任のほうがリスクは高いと判断したのでしょう」
吉と出るか凶と出るかは、これからの結果次第となる。しかし、もしもJ2に降格となれば、札幌には「負のスパイラル」が待ち受けていることが予期され、サポーターは戦々恐々としているという。
「スカウトに定評があり、毎年のように大卒の選手が即戦力で活躍します。それゆえ、ライバルチームの草刈り場となっていて、活躍すればするほど移籍してしまうのは、まさに『札幌あるある』。昨シーズンのオフには、主力のMF田中駿汰がセレッソ大阪へ、FW小柏剛がFC東京に移籍しています。J2降格となれば経営面は苦しくなり、若手の主力選手を大量放出するのは必至で、戦力低下は免れず、J1再昇格どころか、J2の『魔境』に迷い込む可能性が高いとみられています」(前出・サッカーライター)
崖っぷちの状況下ながら、名物監督の起死回生の一手に頼るしか今のところ打ち手はなさそうだけに…サポーターもツラいところだ。
(風吹啓太)