政治資金規制法改正案について、岸田文雄首相は5月31日、公明党の山口那津男代表、日本維新の会の馬場伸幸代表と相次いで会談し、両党の主張を全面的に織り込んだ修正をすることで合意した。これで改正案の今国会成立の目途が立ち、国会の会期延長がなくなったことで、永田町では解散風が吹き始めている。自民党ベテラン秘書が解説する。
「都知事選前後の解散に後ろ向きだった公明党とは、早期解散を了承させることとバーターで、改正案については公明党案を丸飲みしたのではないですか。さらに維新の主張を取り入れ、自公維連立の保険をかけた。これで今国会会期末解散の可能性が出てきましたね」
ここ数日の岸田首相の動きは異例だった。5月29日夜には、都内のホテルで自民党・麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と会食。翌30日には菅義偉前首相を衆院議員会館の事務所に訪ね、話し込んだ。全国紙政治部デスクが言う。
「首相が党内有力者とこんな形で会う際は政治改革の話だけではない、というのが永田町の常識です。政治資金については、自らの責任でやると話したようです。首相が『責任』という言葉を使った場合、失敗なら首相辞任、成功なら『フリーハンドでやらせてもらう』ということです」
現状なら秋の自民党総裁選での、岸田首相の再選は極めて難しい。再選するなら総裁選前に衆院を解散し、総選挙で過半数を獲得するしかない。総裁選に出馬意欲をしているどの候補にも「直前の総選挙で過半数を獲得した現職首相」を上回る魅力がないからだ。
ただ、支持母体の創価学会との関係から、東京都知事選に専念したい公明党が、今秋までの総選挙に難色を示していることがネックだったが、今回の政治資金規正法改正に関連した動きで、山口代表は記者団に「首相として大きな決断をされた」と評価した。
公明党が本気で動き、維新まで懐に入れれば、政治資金スキャンダルで大逆風が吹いている現状でも、衆院選で過半数割れすることはない。今国会会期末は6月23日、あとは首相の「エイや」だけだ。
(健田ミナミ)